#  1076

『山本邦山/大吟醸』
text by 稲岡邦弥


SOLID

山本邦山(尺八)
高谷秀司(g)
マサ大家(g)
石塚まみ(p,vo)
久田義明(synth)
山根悟(jembe)
小山田隆(ds)

1. 日本の四季より - プロローグ
2. 竹田の子守唄
3. アランフェス協奏曲
4. 悲しみの水辺
5. 大吟醸
6. こきりこ節
7. 日本の四季より - エピローグ
8. 哀愁のヨーロッパ
9. リベル・タンゴ

山本邦山師が2006年、ブルース・ギタリストの高谷秀司、マサ大家、ピアニストでヴォカーリストの石塚まみと組んだユニット「大吟醸」(「国宝ユニット」という愛称もあるらしい)。重要無形文化財(人間国宝)である邦山師が70歳を前にしての新ユニット、何ともチャレンジ精神旺盛、懐の深いお方である。おそらく、若いミュージシャンの申し出に胸を貸したものと思われるが、音楽監督格の高谷氏のエッセイによると、師とまず深い人間的な付合いがあってのユニット結成のようである。ユニットのデビュー公演は2007年、池上本門寺本堂、その後、芸大の奏楽堂、八ヶ岳高原音楽堂、滋賀県民創造館杮落としなどで演奏、最近では出雲大社の「平成の大遷宮」祝賀行事にも参加しているという。
このアルバムは、2008年に通販用に制作された内容(#1~7)に2011年の一般発売にあたり#8と#9の2曲がボーナス・トラックとして追加されたもの。邦山師には、ジャズの大ヒット曲<テイク・ファイヴ>という十八番(おはこ)があるが(直近では2007年の「Jazz in 藝大」で聴かせていただいた)、人間国宝の尺八で<哀愁のヨーロッパ>(オリジナルはギターのサンタナ)や<リベル・タンゴ>(同、バンドネオン奏者アストル・ピアソラ)が聴けるというのはファンにとってはたまらない“ボーナス”的喜びに違いない。
都山流には“即興の鬼”田辺頌山や“和楽器の貴公子”藤原道山、身近では“野生尺八”の大由鬼山など、古典本曲に加え、他ジャンルの演奏家と積極的に活動の場を共有する奏者が多いが、邦山師がその先陣を切ったといえるだろう。

このアルバムでは、高谷作曲のオリジナル曲の他に、ギター曲の<アランフェス協奏曲>(第2楽章)と石塚まみの歌う日本民謡の<竹田の子守唄>と<こきりこ節>が収録されているが、出自がどうであれ、邦山師の手にかかるとどの曲も伸びやかにまた軽やかに歌われてしまう。その基になるのが師の追随を許さないリード楽器のような美しい音色である。シリアスな都山流本曲とは対極にあるこの大吟醸ユニットでの邦山師のリラックスした演奏が聴けないのは残念であるが、遺されたこの唯一のCDが慰めである。(稲岡邦弥)

* 関連ページ:
http://www.jazztokyo.com/column/takatani/008.html

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NEW1.31 '16

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#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
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#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣


COLUMN
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#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
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