#  1083

『ヤニック・ネゼ=セガン/シューマン;交響曲全集』
text by 藤原 聡


ドイツ・グラモフォン
4792437(輸入盤)
オープン価格

ヤニック・ネゼ=セガン
(指揮)ヨーロッパ室内管弦楽団

シューマン:
・交響曲第1番変ロ長調 op.38『春』
・交響曲第4番ニ短調 op.120
・交響曲第2番ハ長調 op.61
・交響曲第3番変ホ長調 op.97『ライン』

録音場所:パリ、シテ・ドゥ・ラ・ミュジーク
録音時期:2012年11月(ライヴ)
エグセクティヴ・プロデューザー:ルノー・ロランジェ

ネゼ=セガンがシューマンの交響曲を、しかもヨーロッパ室内管を振って出して来たのには多少意外の感があったのだが、演奏を聴いてみると、これは実に見事である、というか面白過ぎる。ヨーロッパ室内管なので弦楽器群の人数は少なめだ。これは響きの厚みから当然判断できるのだが、そのためか、第2ヴァイオリンやヴィオラといった内声部の動きが手に取るように聴き取れるのが滅法気持ちよい。表情とテンポの変わり身の早さがすばらしく、「晦渋なシューマン像」なんぞどこかへ行ってしまう。全4曲とも優れた出来栄えだが、中でも第2の衝撃度は高い。ともすると精神病理学的観点から語られがちで掴みどころのない同曲だが、まるで「リニューアル・オープンか?」位の楽曲イメージの変化だ。快速テンポで飛ばしに飛ばし−にもかかわらず軽薄にならず、表現が上滑りせずに音もしっかりと鳴り切っているのがこの指揮者の非凡さの表れだ−、第1楽章コーダの加速など凄まじいものがある。と言いつつ第3楽章のアダージョ・エスプレッシーヴォではしっとりと心のこもった歌を聴かせ、芸が細かい(余談だが、この指揮者の実演でロッテルダム・フィルとのブラームスの第4を聴いた時、持続する息の長い歌の見事さに感嘆した。こういうのは録音に入りにくいのだが・・・)。この手の思い切った表現の割り切りが随所に見られ、とにかく飽きる暇がない。まあシューマン・フリークからは鉄拳ばりに「こんなシューマンはイヤだ!」あるいは「全然シューマンぽくない」との意見が出ないとも限らないが、音楽的充実度は無類だ。6月のフィラデルフィア管弦楽団との来日が楽しみになって来ましたね。とにかくお薦めです!(藤原 聡)

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