# 1086
『大友良英 あまちゃんLIVE〜あまちゃん スペシャルビッグバンド コンサート in NHKホール〜』
text by 神野秀雄
ビクターエンターテインメント Blu-ray (VIXL-123 / ¥5,000税抜) DVD 2枚組(VIBL-693〜4 / ¥4,200税抜) CD 2枚組(VICL-75003〜4 / ¥2,800税抜) |
大友良英&あまちゃんスペシャルビッグバンド
大友良英(エレクトリックギター、バンジョー)
江藤直子(ピアノ、エレクトリックピアノ)
近藤達郎(オルガン、ハーモニカ、キーボード)
斉藤 寛(フルート、ピッコロ、リコーダー)
井上梨江(クラリネット)
鈴木広志(サックス、リコーダー)
江川良子(サックス)
東 涼太(サックス)
佐藤秀徳(トランペット)
今込 治(トロンボーン)
木村仁哉(チューバ、スーザフォン)
大口俊輔(アコーディオン)
かわいしのぶ(ベース)
芳垣安洋(ドラムス)
小林武文(パーカッション、チャンチキ)
上原なな江(パーカッション、マリンバ)
相川 瞳(パーカッション)
Sachiko M(sinewaves)
第1部
1. あまちゃん オープニングテーマ
2. 行動のマーチ
3. あまちゃんクレッツマー
4. あまちゃんワルツ
5. 琥珀色のブルース
6. 地味で変で微妙
7. 銀幕のスター
8. 芸能界
9. ミズタク物語
10. アイドル狂想曲
第2部
11. トンネル〜大地
12. 友情と軋轢
13. 奈落のデキシー
14. 上野アメ横1984
15. アキのテーマ
16. 地元に帰ろう
17. TIME
18. 希求
19. 海
20. 灯台
アンコール
21. 潮騒のメモリー
22. あまちゃん オープニングテーマ
「あまちゃん」の強烈なグルーヴに酔いしれたNHKホールコンサート
2013年の社会現象となったNHK朝の連続テレビ小説『あまちゃん』。能年玲奈主演、宮城出身の宮藤官九郎の脚本で、東北から始まり東京へとつながり、過去と現代と未来が交錯するストーリー。その中で音楽がもうひとつの主役であることが次第に明らかになっていく。朝ドラの中でも特異であったのは、インストルメンタルでの<あまちゃんオープニングテーマ>をはじめ数々の劇伴と、劇中歌<潮騒のメモリー>が日本中の人の心をがっちり掴んでしまったこと。そして浮かび上がってきた作曲者の名前が福島出身の大友良英。フリージャズやノイズミュージック、ターンテーブル奏者として世界的に活躍し、映画・ドラマ音楽でも素晴らしい作品を残してきた大友が、朝ドラを担当するときいて、凄いことをやってくれると確信したものの、ここまでの世界観を創り、日本人の誰もが大友の音楽を知るまでの大きな影響力を持つとは思わなかった。『あまちゃん』の魅力と重要性に気づき、多忙な大友に話を聞く機会をもらったのが5月24日、6月2日の新宿ピットイン「大友良英サウンドトラックス」からJAZZ TOKYOの寄稿が始まったが、その時点からも予測できないほどの熱狂が日本中に広がっていく。
『あまちゃん』の音楽の記録は、これまた異例の計4枚のサウンドトラックと『あまちゃん 歌のアルバム』に残されたが、『あまちゃん』の音楽の真髄は、録音現場での共同作業で生み出された生きた音楽にあり、観客をも巻き込んだライブでこそ伝わる。
劇伴の録音の中核にあったミュージシャンたちで、大友良英&あまちゃんスペシャルビッグバンドが結成され、ライブ活動が6月18日アサヒビール・ロビーコンサートから始まった。バンドの3分の2ほどは、東京藝術大学管・打楽器科の卒業生を中心に結成され、CHING-DONG(チンドン)をベースに世界のさまざまな音楽を取り込んで拡張してきた元チャンチキトルネエドのメンバーであり、大友と活動を共にしてきた他のミュージシャンたちと融合して、強烈なグルーヴを生み出し、「フェスティバルFUKUSHIMA!」をはじめとする野外イベントでもその真価を見せた。
ドラマ終了直後の10月1日 福島県文化センターから始まり全国10ヵ所で開催されたホールツアー。その最終公演となる12月5日、東京NHKホールを記録したのがこのDVDだ。制作現場であったNHKのお膝元で、主要スタッフや俳優たちも多数参加していたことも特別感を生み出していた。一曲一曲、制作秘話やドラマの裏話を交えながら和やかに進行する。以前からの大友ファンからすれば、サインウェイブ奏者のSachiko Mの参加が嬉しかった。歌謡曲とはまったく別世界にいると思われながら、<潮騒のメモリー><暦の上ではディセンバー><地元に帰ろう>で「歌謡曲」を生み出す驚くべき才能を見せ、3・11を表現するにあたりサインウェイブが「あまちゃん」で大きな役割を果たしたことで、しっかりした存在感を放っていた。
コンサートの詳細については、ライブレポートに記したのでご参照いただきたい(http://www.jazztokyo.com/live_report/report623.html)。
いや、ぜひDVDでこのコンサートを味わっていただきたい。この後、大友とSachiko Mは「第55回輝く!日本レコード大賞」作曲賞を受賞、紅白歌合戦で『あまちゃん』とスペシャルビッグバンドは、本当の最終回「157話」とも言えるフィナーレを迎えることになったが、このNHKホールでのコンサートは「あまちゃん」という季節を共に過ごした人々にとって、楽しく切なく暖かい想いと不思議な高揚を閉じ込めた特別な記録になった。福島の田舎でジャズを足がかりに歩み始めた大友の音楽が、前衛的な音楽を経由しそのただ中にありながら、このような形で国民的な音楽になったということは、日本ジャズ史の多様性、到達点の一つとして記憶されるべきだと思う。周囲を巻き込み、人とのつながりの中で新しい音を生み出し続ける大友の音楽は立ち止まらない。あまちゃんスペシャルバンドは大友良英ビッグバンドと名を変えて継続し、大友の創作活動の一端を担う。これから大友が創り出す想像もつかない新しい音楽の世界が楽しみだ。(神野秀雄)
【JT関連リンク】
『大友良英/あまちゃん〜オリジナル・サウンドトラック』
http://www.jazztokyo.com/five/five1013.html
『あまちゃん 歌のアルバム(大友良英)』
http://www.jazztokyo.com/five/five1029.html
『大友良英/あまちゃん〜オリジナルサウンドトラック1〜3』
http://www.jazztokyo.com/best_cd_2013a/best_cd_2013_local_03.html
大友良英 with あまちゃんスペシャルビッグバンド〜アンサンブルズ・パレード・プレ・コンサート
第118回 アサヒビールロビーコンサート
http://www.jazztokyo.com/live_report/report542.html
「大友良英&あまちゃんスペシャル・ビッグバンド」
オリジナルサウンドトラック レコ発ライブ& FREE DOMMUNE 0 ONE THOUSAND 2013
http://www.jazztokyo.com/live_report/report556.html
大友良英&「あまちゃん」スペシャル・ビッグバンド 東京・NHKホール
http://www.jazztokyo.com/live_report/report623.html
【関連リンク】
あまちゃんLIVE ダイジェスト映像
http://youtu.be/mB15tciHCOk
大友良英JAM JAM日記
http://d.hatena.ne.jp/otomojamjam/
KBS京都ラジオ 大友良英のJAM JAM ラジオ
http://www.kbs-kyoto.co.jp/radio/jam/
NHK朝のテレビ小説「あまちゃん」
http://www1.nhk.or.jp/amachan/
プロジェクトFUKUSHIMA!
http://www.pj-fukushima.jp/
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連続テレビ小説「あまちゃん」 オリジナルサウンドトラック ビクターエンターテインメント VICL-64041 2013年6月19日 3,000円(税抜) | 連続テレビ小説「あまちゃん」 オリジナルサウンドトラック2 ビクターエンターテインメント VICL-64073 2013年9月18日 3,000円(税抜) | 連続テレビ小説「あまちゃん」 オリジナルサウンドトラック3 ビクターエンターテインメント VIZL-6292 2013年12月25日 3,500円(税抜) |
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「あまちゃん 歌のアルバム」 ビクターエンターテインメントVICL-64071 2013年8月28日 2,500円(税抜) | 菅野よう子 連続テレビ小説「ごちそうさん」 オリジナルサウンドトラック ゴチソウノォト ビクターエンターテインメント VICL-64097 2013年12月4日 \3,000(税抜) ※「あまちゃん」の後を引き継ぎ、それを超える高視聴率を記録しながら終了した「ごちそうさん」。宮城出身の菅野よう子作曲、ウィーン・オペラ舞踏会管弦楽団による演奏は秀逸だった。ここに記録に留めておきたい。 |
追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley
:
#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣
:
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi
#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報
シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻
音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美
カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子
及川公生の聴きどころチェック
#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
#265 『中村照夫ライジング・サン・バンド/NY Groove』 (Ratspack)
#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)
オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美
ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)
:
#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義
:
#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
#874「マーク・ジュリアナ・ジャズ・カルテット」神野秀雄
#875「ノーマ・ウィンストン・トリオ」神野秀雄
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