# 1092
『ポリーニ/ブラームス:ピアノ協奏曲第2番変ロ長調作品83』
text by 藤原 聡
DGG/ユニバーサル・ミュージック UCCG-1651(国内盤/\2,808) ドイツ・グラモフォン 4792384(輸入盤/オープン価格) |
マウリツィオ・ポリーニ(ピアノ)
クリスティアン・ティーレマン(指揮)シュターツカペレ・ドレスデン
録音:2013年1月25日、ドレスデン、ゼンパーオーパー(ライヴ)
ポリーニ、3度目のブラームス:ピアノ協奏曲第2番の録音であるが、録音時71歳に達していたポリーニのピアノはさらに渋さと深みを増している。旧録音―特に1976年盤―の、あらゆる音に光を当て尽くした、硬質の音色による大理石のような演奏と比べるとその違いは大きい。ポリーニの場合、デビュー時よりその完璧な技巧が常に話題となり、音楽内容よりは技巧自体が前面に出、また議論の対象になる場合が多かったように思う。ここでのポリーニは、加齢による体力の低下、当然それに付随する指のメカニカルな衰えが、必然的に渋みを引き寄せたとは言えるのだが、昔のこのピアニストにはなかった自然な息使いや起伏、情熱の発露が感じられ、大いにこの演奏の存在価値を主張しているのだ。中には第1楽章や第2楽章でタッチがいささか不鮮明になったり、多発する重音を完全に掴みきれていない箇所が気になる方もいるかも知れない(筆者はほとんど気にならないが)。しかし、そんな方も第3楽章は諸手を挙げて賞賛するに違いない。ここでは近年のポリーニの特質が完全にプラスに作用しており、深々とした音色と情感の豊かさにおいて過去2回の録音を明らかに凌駕している。特に楽章後半部分のしみじみとした味わいは最高である。華やかな中にも落ち着きのある終楽章も、今のポリーニだからこそ表出出来た味わいだろう。
さてバックのティーレマンとシュターツカペレ・ドレスデンだが、第1番でも感じられたけれども、ポリーニにかなり歩み寄っているように思われる。基本的には重厚に鳴らすよりは意外に引き締まったテンポで明快に鳴らして行き、その意味からは普段のティーレマンとは趣が異なる。指揮者とソリストが己のスタイルをぶつけ合うような、協奏曲というよりは「競奏曲」を期待する向きには普段のティーレマン節を炸裂させて欲しいと思われるかも知れないが、いつもながらのドレスデンのコクのある美音と有機的な伴奏も相まって、大変素晴らしい。(藤原 聡)
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