#  1095

『NYTC〜ニューヨーク東京コネクション/プレシャス〜ライヴ・アット・B-Flat』
text by 稲岡邦弥


Seven Steps THIFA-016

デイヴ・ピエトロ(as)
ジョナサン・カッツ(p)
安カ川大樹(b)
江藤良人(ds)

1. Alfie (Burt Bacharach/Hal David, arr. Katz) 7:45
2. Nugatory Thoughts (Dave Pietro) 8:33
3. Let's Decide (Jonathan Katz) 6:51
4. Precious (Jonathan Katz) 8:41
5. Tathata (Dave Pietro) 7:15
6. Love Theme from Cinema Paradiso (Andrea Morricone, arr. Pietro) 8:52
7. Summertime (George Gershwin/Dubose Heywood, arr. Katz) 6:34
8. The Deep Valley (Daiki Yasukagawa) 5:42
9. Gunma Hoedown (Jonathan Katz) 5:08

録音:春日洋 ライヴ@赤坂B-Flat 2012年5月21日
ミキシング&マスタリング:マイケル・マルシアーノ@Systems Two ブルックリンNY
プロデューサー:デイヴ・ピエトロ&ジョナサン・カッツ

日本でよく知られた4人が組んだカルテット、「ニューヨーク東京コネクション」。デイヴ・ピエトロは、秋吉敏子さんのオーケストラ、最近ではマリア・シュナイダーのオーケストラ、その合間を縫ってNYTCなどでの来日と、すでに20数回の訪日経験があるという。ジョナサン・カッツは、上智大学への留学がきっかけで1991年から東京を拠点に活動を展開しており、今では親父ギャグを連発するほど日本語が堪能(僕はまだ対戦の機会がないが、やはり親父ギャグが得意な『マンボ・イン』(http://www.jazztokyo.com/five/five1070.html)のスティーヴ・サックス(演奏楽器がサックスで良かった!以前、近藤等則のバンドに[ロドニー]ドラマーという名のベーシストがいて混乱の原因を作っていた)の折り紙付きだから間違いないだろう。安カ川大樹と江藤良人も実力派のミュージシャンで、両者ともさまざまなシーンで活躍しているが、安カ川の生は男性ヴォーカルの小林桂のコンサートで何度か接したことがある。
楽曲は、ジョナサンが3曲、デイヴが2曲、安カ川が1曲を提供、加えて良く知られたスタンダードが3曲。結成して10年目、音楽的にも人間的にも気心が知れた間柄だが、決してノリ一発で演奏するようなことはなく、それぞれにひと味違うアレンジが施されている。オープナーの<アルフィー>は、アフロ系と4ビートが往き来するアレンジで、<サマータイム>は早目のテンポの4ビート。この2曲はジョナサンのアレンジで、彼はお馴染みの楽曲に新しいを装いをさせてリニューアルするのが得意。上掲の『マンボ・イン』で小学唱歌の<海>をマンボにアレンジした才覚は新鮮な驚きだった。
テーマやソロを取る場面はアルトのデイヴが多いが、さすがに練達のベテラン、縦横無尽の吹きっぷりで、向かうところ敵無し、という趣。ジョナサンも華奢な見かけによらず、<レッツ・ディサイド>や<タターター>のソロでは熱くグイグイ迫る。安カ川と江藤は見事なコンビでバンドをドライヴさせるが、安カ川はオリジナル<ディープ・ヴァリー>でイントロからテーマで見事なアルコを聴かせ、江藤も<ディープ・ヴァリー>や<群馬ホーダウン>で定評のあるブラシさばきを披露する。
熱くバウンスする演奏が多い中でオアシス的存在が<プレシャス>と<愛のテーマ>。<プレシャス>は表紙を飾るジョナサンが愛娘の誕生を前に書いたストレート・ワルツで、生きた“宝もの”を慈しむような心に迫るメロディーが印象的。<愛のテーマ>はデイヴのアレンジで、ベースのイントロに導かれてお馴染みのメロディーがボサノヴァで奏される。
コンボ・ジャズのお手本のような充実した演奏で、リスナーにとっては聴きどころの多いお得なアルバムといって良いだろう。5月30日からツアーに出るということなので、生の演奏に接するファンも多いことだろう。(稲岡邦弥)

関連リンク(ジョナサン・カッツ・インタヴュー);
http://www.jazztokyo.com/interview/interview124.html

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NEW1.31 '16

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