# 1114
『David Weiss / When Words Fail』
text & photos by Takehiko Tokiwa
2014 Moténa Music MYM-114 |
David Weiss (tp)
Myron Walden (as)
Marcus Strickland (ts)
Xavier Davis (p)
Dwayne Burno (b)
E.J. Strickland (ds)
Ben Eunsen (g,3,8)
1.The Intrepid Hub
2.When Words Fail
3.MJ
4.Wayward
5.White Magic
6.Loss
7.Lullaby For A Lonely Child
8.Passage Into Eternity
Recorded by Joe Marciano at Systems Two Brooklyn, December 6 & 7, 2013
Produced by David Weiss
Executive Producer : Jana Herzen
ミュージック・ビジネス業界が隆盛を誇っていた 1990年代から一転して、2000年代以降は、かつてのようにアーティストが創造力のおもむくままに、アルバムを制作するのが、難しい状況にある。その現状の中で、この6年間に5つのグループで、9作のアルバムを複数のレーベルから精力的にリリースし、高い評価を得ているデヴィッド・ワイス(tp)は、希有な存在だ。New Jazz Composers Octet, Point of Departure Quintet, David Weiss Sextetで活動しながら、リー・モーガン(tp)とフレディ・ハバード(tp)のトリビュート・ユニットとして始まった The Cookers、昨年のウェイン・ショーター(ts)の生誕80年を記念したトリビュート・ビッグバンドなどで、アルバムを残してきた。また、唇の故障で、不遇の晩年を過ごしていたフレディ・ハバード(tp)をサポートし、そのオリジナル曲をフィーチャーしたアンサンブルを立ち上げ、再びスポット・ライトを当てた。演奏活動の第一線から身を引き、教育活動にシフトしていたチャールス・トリヴァー(tp)のために、2003年にビッグ・バンドの再結成に尽力し、2枚のアルバムをレコーディング、グラミー賞ノミネートと、見事な復活を遂げさせたのも、大きな功績の一つだ。 本作はワイスのオリジナル・セクステットのほぼ10年ぶりのリユニオン作品である。新進気鋭の若手で結成されたセクステットのメンバーは、それぞれがリーダー・グループを率いる堂々たる中堅アーティストへと成長を遂げた。マイナー・キーの曲が多いこのアルバムは、2013年に、フランク・ウェス(ts,fl)、ジム・ホール(g)、シダー・ウォルトン(p)ら、ジャズ・マスターズや、コネチカット州の銃乱射事件で幼い命を失ったジミー・グリーン(ts)の愛娘ら、多くの人々との別離を描いたレクイエム集と言える作品である。3管のアレンジが、黄金期のアート・ブレーキー(ds)&ジャズ・メッセンジャーズを彷彿させる1は、ワイスの永遠のアイドル、フレディ・ハバード(tp)に捧げた曲だ。タイトル曲の2は、レコーディング終了後に急逝した参加ベーシストのドウェイン・ブルーノをトリビュートした。奇しくも本作は彼の遺作となる。ジミー・グリーン・ファミリーに捧げられた8まで、ダークなトーンで人生の機微を感じさせるメロディ・ラインが紡がれている。フレディ・ハバード(tp)、チャールス・トリヴァー(tp)らとの緊密な交流、ウェイン・ショーター(ts,ss)の60年代作品の研究の中で過ごしたこの10年間は、デヴィッド・ワイスに、濃厚なハード・バップのエッセンスを注ぎ込んだ。卓越したトランペットの演奏技術と、高い作編曲能力によって、ストリックランド・ブラザース、マイロン・ウォルデン(as)ら現代の精鋭たちとともに、21世紀のハード・バップへと昇華させている。次は、どのようなプロジェクトが始動するのか?デヴィッド・ワイスの動向は要注目である。(常盤武彦)
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常盤武彦 Takehiko Tokiwa
1965年横浜市出身。慶應義塾大学を経て、1988年渡米。ニューヨーク大学ティッシュ・スクール・オブ・ジ・アート(芸術学部)フォトグラフィ専攻に留学。同校卒業後、ニューヨークを拠点に、音楽を中心とした、撮影、執筆活動を展開し、現在に至る。著書に、「ジャズでめぐるニューヨーク」(角川oneテーマ21、2006)、「ニューヨーク アウトドアコンサートの楽しみ」(産業編集センター、2010)がある。
追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley
:
#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣
:
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi
#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報
シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻
音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美
カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子
及川公生の聴きどころチェック
#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
#265 『中村照夫ライジング・サン・バンド/NY Groove』 (Ratspack)
#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)
オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美
ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)
:
#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義
:
#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
#874「マーク・ジュリアナ・ジャズ・カルテット」神野秀雄
#875「ノーマ・ウィンストン・トリオ」神野秀雄
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