# 1121
『David Neves / Progress Report』
text by Kiyoshi Tsunami
David Neves(tp)
Michael Thomas(sax)
Barclay Moffitt(sax)
Greg Duncan(g)
Jake Sherman(p)
Luke Marantz(p)
Zwelakhe-Duma Belle le Pere(b)
Lee Fish(ds)
1 Lindsey
2 Hamilton
3 Progress Report
4 For J.P.
5 Curious Traveler
6 Evelynn's Song
7 April 14Th, 2013
8 End of the Beginning
9 Late Night Set
David Nevesはバークリー音楽院でのタイガー大越の生徒。稲岡編集長へのメールによれば、18,19歳の時に出会い「私に習わないか?」と伝えた時からの間柄だそうだ。最初のレッスンの時、「2年間僕を信じて練習に没頭してほしい。貴方がなりたいと思っているトランぺッターになれるように約束するから」と話したという。バークリーを卒業後、ニューイングランド・コンサーバトリーの大学院でローリー・フリンクに師事,ジェリー・バガンジーなどにも教わり、ケニー・ドーハムの歌心を愛するという。
僕はタイガーのこのコメント、特に「2年間僕を信じて〜」にグッときながら、このDavid Nevesの音楽を聴き始めたのだが、結論から申せば、個人的にとてもシンパシーを感じるトランペット奏者であった。ジャズは伝承の音楽でもあるけれど、この David Nevesは先達からの借り物のフレイズや意匠には満足せず、自分なりの表現方法でジャズ・トランペットの道を進もうとしているのがよくわかる。そしてアルバム全体の印象は、趣味の良い、しかしまだ枯れてはいない短編集の趣で、1曲ずつ丁寧に吹き進めていく感じは、実はトランペットの新人には感じにくいものなのだ。
冒頭、ベースとピアノ低音部のユニゾンに導かれるテーマは、トランペットとアルトが主体の爽やかさ、2曲目はギターが絡みソロには一瞬ショーター・フレイズが顔を出す。3のゆったりとした3拍子、4のテーマはトランペットとバス・クラ、テナーが絶妙にブレンドされ、5ではこの人の持ち味である濡れて哀感あふれる音色が静かに漂い、6は一転して複雑なアンサンブルが提示されるが、ここでも無機質に陥らないのがこの人らしさなのだろう。エフェクツを効かせた7、フリーな8を経て最終の9がまた泣かせる。
「過去6年間の自分の人生を音楽的に表現した」作品という。「特別な人、場所、できごとが題材」とも。オリジナルのタイトルとなった人名や日時が気になってくるが、僕は確かに、David Nevesという人の人生の一部分を聴いている気持ちになった。
黒縁の眼鏡にダークスーツ、シンプルなタイ、控えめな髪型と髭。きっと物静かに話す人なのだろう。中庸でとんがった部分のない音色、これ見よがしさ皆無のフレイズ。なるほどケニー・ドーハムという名前が浮かんくる。昔書いてたジャズ雑誌なら4.5点を献上したい素晴らしい作品。僕は大好き。(都並清史)
都並清史 Tsunami Kiyoshi
東京生まれ。「立教大学 ニュー・スウィンギン・ハード」OB。ヤマノ・ビッグバンド・ジャズ・コンテストで「敢闘賞」(1978)「最優秀賞」「優秀ソリスト賞受賞」(1980)をそれぞれ受賞。近田春夫の「ビブラストーンズ」を経てジャズ・ライターに。「スイング・ジャーナル」誌他で健筆を振るった。サッカー元全日本代表の都並敏史(現解説者)は実弟。共著に「200CD 21世紀へのジャズ」(立風書房)他。
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#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣
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