# 1133
『ピエール=ロラン・エマール(ピアノ)/J.S.バッハ:平均律クラヴィーア曲集第1巻(全曲)』
text by Satoshi Fujiwara
DGG/ユニバーサルミュージック 4792784(輸入盤:オープン価格)/ UCCG-1672〜3(国内盤:¥3,780) |
ピエール=ロラン・エマール (pf)
録音:2014年3月、ベルリン
言葉の最良の意味で、まさに「模範的」名演。
10月に来日が控えているピエール=ロラン・エマール。来日公演のプログラムは、お得意のエリオット・カーターと並んで当新譜での楽曲、J.S.バッハの平均律クラヴィーア曲集第1巻である。録音は今年の4月。ここ最近、世界中の様々な場所で繰り返し弾き込んでいるのがこの曲だ。
そこで当ディスクでの演奏であるが、いかにもエマールらしいクリアな−あまりにクリアな−名演である。基本的には演奏者で余計な色付けを行なわない、ニュートラルな演奏と言える。極めて正確でもある。近年、ポリーニやバレンボイムなどが、あくまで後年のロマン派の文脈に寄り添った解釈で聴かせた平均律だが、ここでのエマールはかなり禁欲的である。聴き手によってはもう少し大見得を切ったダイナミックな表現を聴きたいと思うかも知れないが、それでもピアノらしい豊穣さも必要にして充分備わっている。そして、特筆すべきはどの曲においてもそうだがフーガにおける各声部の明晰な弾き分けであろう。モダンピアノでここまで見事に「腑分け」した例は、ヒューイットやシフ以外になかなか聴いた試しがない(特殊なグールドは別として)。胸のすくような弾きぶりだ。より過去にさかのぼれば、リヒテル盤のような特異な名盤も存在したけれど、あれは「リヒテルの音楽」であってバッハ寄りではないとも言える。現時点で、ピアノで演奏した平均律クラヴィーア曲集第1巻のディスクの中で1番模範的な名演と呼びうるのがこのエマール盤だという気がする。ピアノの素晴らしい音色を捉え切った録音にも拍手(余談だが、映画『ピアノマニア』において、「フーガの技法」のレコーディングでピアノの音色への尋常ではないこだわりを披露してお抱え調律氏に徹底的に食い下がるエマールの姿を思い出す)。第2巻の録音も気が早いかも知れないが早速期待しておこう。(藤原聡)
藤原聡
代官山蔦屋書店の音楽フロアにて主にクラシックCDの仕入れ、販促を担当。クラシック以外ではジャズとボサノヴァを好む。音楽以外では映画、読書、アート全般が好物。休日は可能な限りコンサート、ライヴ、映画館や美術館通いにいそしむ日々。
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