# 1145
『トム・ハレル/トリップ』
text by Masanori Tada
High Note Records/キング・インターナショナル KKE-037¥2,190+税 |
Tom Harrell (tp, flh)
Mark Turner (ts)
Ugonna Okegwo (b)
Adam Cruz (ds)
1. Sunday
2. Cycle
3. The Ingenious Gentleman (Adventures of a Quixotic Character Pt. 1)
4. The Duke and the Duchess (Adventures of a Quixotic Character Pt. 2)
5. Enchanted (Adventures of a Quixotic Character Pt. 3)
6. Sancho and Rocinante (Adventures of a Quixotic Character Pt. 4)
7. The Princess (Adventures of a Quixotic Character Pt. 5)
8. Windmills (Adventures of a Quixotic Character Pt. 6)
9. Coming Home
10.Coastline
11.After the Game is Over
12.There
All compositions by Tom Harrell (Tom Harrell Music; SESAC)
トム・ハレル。トランペット奏者。1946年生まれ、68さい。
ビル・エヴァンスの『We Will Meet Again』1979で、トム・ハレルの名を知った。当時は33さいの若者だったのか。この盤以降、気にしたことがない。とてもジャズファンだとは名乗れない。
エスペランサ・スポルディングを全面的にフィーチャーしたダブル・ベース/2サックス(3管) 編成の『カラーズ・オブ・ア・ドリーム』2013、2ベースのグルーヴもたまらない、という盤もあるのか。これから入手しなければ。
マーク・ターナーが入っている新譜というので、手にした。
これはじつにいい。ゆったりと堂々とした1曲目、アップテンポにカッコをつけるダンディな2曲目。トム・ハレルとのユニゾンを見事に決めて、マーク・ターナーのソロ!堂々とした崩しで着実なステップを、おのれの舞いを披露する、名人芸の風情。そして、トム・ハレルの颯爽とした厚みのある柔らかいソロの懐が深い。
このところECMレーベルで次々と可能性に挑むマーク・ターナー、こういうモダンジャズなサウンドでの落ち着いたスリリングさも格別ではないか。
それにしても、全曲作曲もするトム・ハレル。ピアノやギターというコード楽器を置かずに、自分の吹きたい弾きたいトランペットを知り尽くした上でのコンポジションの安定さ。楽しくってしょうがないという気持ちまで伝わってくる。トランペットに付けるプルトップを変形させた手作りアクセサリーをジャケに持ってくるかんじも、そう。
2012年のイベントThe Festival of New Trumpet Musicでのオープニングで披露したセルバンテスの小説からインスパイアされた組曲が3曲目から8曲目まで。
トム・ハレルは統合失調症であった歩みを知る
(http://kosmoceras.com/blog/famous-person-with-schizophrenia-tom-harrell/)。それはそれで、映画みたいだ。じつに聴き飽きない、カラフルで楽しさいっぱいの演奏が続く。絶好調みたいだ、トム・ハレル。CDの解説文は同じトランペッターのデイヴ・ダグラスが執筆している。デイヴ・ダグラスがトム・ハレルに学ぶことはたくさんあるみたいだ。(多田雅範)
多田雅範 Masanori Tada / Niseko-Rossy Pi-Pikoe。
1961年、北海道の炭鉱の町に生まれる。東京学芸大学数学科卒。元ECMファンクラブ会長。音楽誌『Out There』の編集に携わる。音楽サイトmusicircusを堀内宏公と主宰。音楽日記Niseko-Rossy Pi-Pikoe Review。本誌副編集長。
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