# 1155
『Jonathan Kreisberg / Wave Upon Wave』
text & photo by Takehiko Tokiwa
New for Now Music
Jonathan Kreisberg (g)
Will Vinson (as, p on 5)
Rick Rosato (b)
Colin Stranahan (ds)
Kevin Hayes (p, 1,5,6,7)
1.Wave Upon Wave
2.Until You Know
3.Stella By Starlight
4.Wild Animals We've Seen
5.Being Human
6.From The Ashes
7.The Spin
8.Peace
9.Ecaep
Recorded by Michael Marciano at Systems Two Studios, Brooklyn, NY on May 15 &16, 2014.
Produced by Jonathan Kreisberg
アメリカのジャズ・ギター・シーンは長らく、パット・メセニー(g)、ジョン・スコフィールド(g)、ビル・フリゼール(g)の三大コンテンポラリー・ギタリストがリードしてきたが、この10年の間、若手ギタリスト達の台頭が注目を集めている。マイク・モレノ、マイルス岡崎、ゲイリー・バートン(vib)に見いだされたジュリアン・レイジ、ノルウェー出身のラージュ・ルンド、イスラエル出身のギラード・ヘクセルマン、マシュー・スティーヴンス、ニア・フィルダーと多士済々である。彼らは、前世代のスタイルを完全に消化し、自らのヴォイスを手に入れ、新たな領域を拡大している。本アルバムの主人公ジョナサン・クライスバーグも、現代ジャズ・ギター・シーンの重要なピースだ。
マイアミ大卒業後、同地での活動を経て、1997年にニューヨークに進出したクライスバーグは、リー・コニッツ(as)、ドクター・ロニー・スミス(org)ら大ヴェテランのグループで重用されながら、自己のグループでも活躍し、現在まで9枚のアルバムをリリースしている。記念すべき10枚目の本作は、盟友ウィル・ヴィンソン(as)、若手のリック・ロサト(b)、コリン・ストラナハン(ds)のレギュラー・クァルテットに、スペシャル・ゲストとしてケヴィン・ヘイズ(p)を4曲に迎えた。アルバム中5曲の新曲(1,2,4,5,7)は、アルバム・ タイトルの”Wave Upon Wave"を象徴する組曲の構成となっている。"Wave Upon Wave"とは、海浜の奥深くまで打ち寄せる波を意味し、自らの音楽的ルーツを深く掘り下げ、謙虚に対峙することへの隠喩となっている。また旧作の6は、2001年9月11日の同時多発テロへのオマージュとして書かれた曲で、復活するニューヨーク・シティへの讃歌を、10年以上が過ぎ去った現在に、改めて高らかに歌い上げた。筆者が撮影した、11月11日のNYのジャズ・クラブ"ジャズ・スタンダード"におけるリリース・ギグで、2ndセットのオープニングを飾った3や、レコーディングの一ヶ月後に逝去したホレス・シルヴァー(p)の8など、ジャズのルーツに根ざしながら斬新さを併せ持つアプローチは、スリリングだ。アルバム・カヴァーにはクレジットされていないシークレット・トラックの9は、最初の2分ほど無音なので、ややもすると聴きもらすかもしれないが、抽象的なサウンド・コラージュのようなアプローチで、コントラストを描いている。まさに群雄割拠の、現代ジャズ・ギター・シーンを象徴する一枚である。(常盤武彦)
関連リンク
Jonathan Kreisberg: http://www.jonathankreisberg.com
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ジョナサン・クライスバーグ | コリン・ストラナハン | ケヴィン・ヘイズ |
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ウィル・ヴィンソン | ジョナサン・クライスバーグ | リック・ロサト |
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ジョナサン・クライスバーグ・クインテット | ||
写真撮影:2014年11月11日 @Jazz Standard, NYC |
常盤武彦 Takehiko Tokiwa
1965年横浜市出身。慶應義塾大学を経て、1988年渡米。ニューヨーク大学ティッシュ・スクール・オブ・ジ・アート(芸術学部)フォトグラフィ専攻に留学。同校卒業後、ニューヨークを拠点に、音楽を中心とした、撮影、執筆活動を展開し、現在に至る。著書に、「ジャズでめぐるニューヨーク」(角川oneテーマ21、2006)、「ニューヨーク アウトドアコンサートの楽しみ」(産業編集センター、2010)がある。
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