#  1156

『Steve Wilson & Lewis Nash Duo / Duologue』
text & photo by Takehiko Tokiwa


MCG Jazz

Steve Wilson (as,ss)
Lewis Nash (ds)

1.Caravan
2.The Mooche
3.Rcjg
4.Monk Medley Pt 1 (Ask Me Now, Evidence)
5.Row Twelve
6.Black Gold
7.Jitterbug Waltz
8.Freedom Jazz Dance
9.Monk Medley Pt 2 (Bright Mississippi, Four In One)
10.Happy House
11.Woody 'n' You

Recorded by Jay Dudt at Manchester Craftsmen's Guild , Pittsburgh PA on March 16&17, 2013.
Produced by Marty Ashby

 ビッグバンドからコンボまで、エモーショナルなプレイで知られる2人のマエストロ、スティーヴ・ウィルソン(as,ss)とルイス・ナッシュ(ds)は、2001年から散発的に、デュオ・ユニットで演奏活動を繰り広げてきた。いよいよ機が熟した2013年3月、ペンシルヴェニア州ピッツバーグで、精力的にジャズ・コンサートのプロデュースとライヴ・レコーディングを展開している、マンチェスター・クラフトマンズ・ギルドでのライヴ・レコーディングが実現し、生まれたのが本作である。
 コード楽器とベース・ラインを排した、ドラムスとサックスのデュオというと、全盛期のジョン・コルトレーン(ts,ss)・クァルテットの演奏が佳境に達したときの、コルトレーンとエルヴィン・ジョーンズ(ds)のデュオや、その後任のラシッド・アリ(ds)とのデュオが、思い出される。概してアヴァンギャルド系のスタイルで、よく聴かれるフォーマットである。ウィルソンとナッシュのデュオ・チームは、そのアグレッシヴな激しさを保ちつつも、ベース・ラインとコードが聴こえるような、ビッグバンドのアンサンブルが聴こえてくるような錯覚にとらわれる、スケールの大きな演奏を展開している。エリントン、モンク、ガレスビー、ファッツ・ワーラ ー(p) の7,オーネット・コールマン(as,tp,vln)の10といった長く弾き継がれてきた選曲も、新たな命を与えられた。またエディ・ハリス(ts)の8は、ナッシュが一人で、メロディ、インプロヴィゼイションを繰り広げている。ウィルソンは自らのオリジナル5で、スペイシーな完全ソロ・サックスを聴かせる。また3は、ロン・カーター(b)と、ジミー・ジェフリーに捧げた作品だ。ルイス・ナッシュは「アプローチは基本的にクァルテットの時と変わらないが、ベースとピアノが聴こえないから、さらにスティーヴの音に集中でき、反応できる」と語り、スティーヴ・ウィルソンは「まるで2人で一つの脳を共有しているかのような、稀有な体験だった」と、セッションを振り返る。すべての曲も、長くても5分強ぐらいにおさめられ、けっして過剰なフリー・インプロヴィゼーションに陥らない、抑制の効いたプレイをしている。達人たちの、デュオローグに身を任せると、そこにジャズという音楽の深みが垣間見えてくる。(常盤武彦)

関連リンク
Manchester Craftsmen's Guild http://mcgyouthandarts.org

ルイス・ナッシュ ルイス・ナッシュ スティーヴ・ウィルソン
スティーヴ・ウィルソン スティーヴ・ウィルソン&ルイス・ナッシュ スティーヴ・ウィルソン&ルイス・ナッシュ
写真撮影:2014年11月22日 @The Jazz Gallery, NYC.

常盤武彦 Takehiko Tokiwa
1965年横浜市出身。慶應義塾大学を経て、1988年渡米。ニューヨーク大学ティッシュ・スクール・オブ・ジ・アート(芸術学部)フォトグラフィ専攻に留学。同校卒業後、ニューヨークを拠点に、音楽を中心とした、撮影、執筆活動を展開し、現在に至る。著書に、「ジャズでめぐるニューヨーク」(角川oneテーマ21、2006)、「ニューヨーク アウトドアコンサートの楽しみ」(産業編集センター、2010)がある。

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