# 1168
『Medeski Scofield Martin & Wood/Juice』
text & photos by Takehiko Tokiwa
INDIRECTO RECORD IR16 |
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John Medeski (kb,org,p)
John Scofield (g)
Billy Martin (ds,per)
Chris Wood (b,el-b)
Pedrito Martinez (per, 4,9)
1. Sham Time
2. North London
3. Louis The Shoplifter
4. Juicy Lucy
5. I Know You
6. Helium
7. Light My Fire
8. Sunshine of Your Love
9. Stovetop
10. The Times They Are A-Changin'
Recorded by Chris Bitner at Applehead Studios, Woodstock NY.
ニューヨークのアンダーグラウンド・ミュージック・シーンに、90年代からカリスマ・トリオとして君臨するメデスキ・マーティン&ウッドと、ジョン・スコフィールド(g)が初共演してアルバムをリリースしたのは1997年だった。全曲スコフィールドのオリジナルのアルバム『A Go Go』は、当時隆盛を極めていたジャム・バンド・シーンでも高く評価され、スコフィールドは、若い大学生らにリスナー層を広げた。2000年頃ジャム・バンド・シーンの真っ只中にいたスコフィールドは、メデスキ・マーティン&ウッドらの音楽を評して、一種のフリー・ファンクと捉えており、また当時若手だった彼らと共演し、自らの音楽をリフレッシュする心境を「やっとマイルスが、自分を起用してくれた理由が分かってきたような気がする」と語っていた。グループ名をメデスキ、スコフィールド、マーティン&ウッド(MSMW)として2006年に再結集、アルバム『Out Louder』を発表、 それぞれのオリジナルやカヴァー曲をプレイする。2011年にも大規模なツアーを敢行し、ライヴ・アルバム『In Case The World Changes Its Mind』をリリース、その音楽的完成度を高めた。2014年年頭に、本アルバムをレコーディング、ヨーロッパ、全米ツアーを巡り、4度目のリユニオンを果たした。4作目となる本作『Juice』は、もはやヴェテランの域に達しつつあったメデスキ、マーティン&ウッドと、コンテンポラリー・ジャズ・ギタリストの揺るぎない巨匠の座にあるスコフィールドが、がっぷりと四つに組んだ作品だ。アフロ=ラテン・リズムが多く導入され4、9ではペドリト・マルティネスも参加し、グルーヴにブーストする。スコフィールドは、このサウンドをMSMW流のアフリカ起源の音楽スタイルだと語っている。3、6ではMSMWでは初めてジョン・メデスキがピアノをプレイ、バンドに新たな色彩を加えた。今作は、カヴァー曲が多いのも初めての挑戦である。ソウル・ジャズのファウンダーの一人、エディ・ハリス(ts)の1、ドアーズの7、クリームの8など見事な換骨奪胎で、MSMW色に染められている。エンディングを飾るボブ・ディラン(vo,g)の10は、賛美歌のような神々しささえ帯びている。ライヴのアンコールも同曲で締めくくられた。数年後のリユニオンを期待しつつ、それまでは本アルバムを愛聴したい。(常盤武彦)
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Terminal 5の観客 | ジョン・メデスキ | ジョン・スコフィールド |
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ビリー・マーティン | クリス・ウッド | ビリー・マーティンの母ジーン・マーティンとそのパートナー |
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メデスキ、スコフィールド、マーティン&ウッド | メデスキ、スコフィールド、マーティン&ウッド | メデスキ、スコフィールド、マーティン&ウッド |
写真撮影:2014年12月11日 @Terminal 5, NYC
常盤武彦 Takehiko Tokiwa
1965年横浜市出身。慶應義塾大学を経て、1988年渡米。ニューヨーク大学ティッシュ・スクール・オブ・ジ・アート(芸術学部)フォトグラフィ専攻に留学。同校卒業後、ニューヨークを拠点に、音楽を中心とした、撮影、執筆活動を展開し、現在に至る。著書に、『ジャズでめぐるニューヨーク』(角川oneテーマ21、2006)、『ニューヨーク アウトドアコンサートの楽しみ』(産業編集センター、2010)がある。
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