# 1172
『カール・ベーム
ブラームス:交響曲第2番ニ長調作品73、モーツァルト:交響曲第28番ハ長調K.200/189k、ピアノ協奏曲第27番変ロ長調K.595
』
text by Satoshi Fujiwara
TESTAMENT SBT2 1499 (2枚組) |
演奏:
カール・ベーム(指揮)ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団/エミール・ギレリス(ピアノ)
曲目:
ブラームス:交響曲第2番ニ長調作品73、
モーツァルト:交響曲第28番ハ長調K.200/189k、ピアノ協奏曲第27番変ロ長調K.595
録音:1970年8月15日、ザルツブルク祝祭大劇場でのライヴ
TESTAMENTレーベルはしばしば驚くような初出蔵出し音源を製品化してくれるのだが、今回のベーム&ベルリン・フィルによる1970年8月15日のザルツブルク音楽祭ライヴなども正にそれである。録音はオーストリア放送協会(ORF)、CD化に際してのリマスタリングはポール・ベイリー。ところでライナーノートによれば、ベームはザルツブルク音楽祭でベルリン・フィルをその生涯に都合4回振っているとのことである。当録音が何度目の共演なのかは不明だが、ベームがまだまだ意気盛んであった1970年、しかもスタジオ録音では取り澄ました演奏になってしまうこともしばしばであるこの指揮者の本領が発揮されるライヴ、さらに加えてカラヤンの元で絶頂期を迎えていたと言っても良いベルリン・フィルとの共演ということでいやが上にも期待は高まるが、果たしてその演奏は実に、実に見事なものだ。好調時のベーム特有の引き締まった造形と強烈な推進力にまずは耳が捉えられる。この交響曲を覆う抒情的な気分よりも、ことによると第1交響曲以上に手が込んでいるとも言いうる緻密な動機労作のありようが手に取るように分る演奏、と評すべきか。楽章間のテンポの対比も全くすばらしい。雰囲気的なものは厳しく退けられる。外側から付け加えられた感情ではなく、自ずと内面から湧き上がってくる情感が尊いが、ベームのような厳格かつ自律的な演奏でこそブラームスの良さが分ろうというものだ。そしてザルツブルク祝祭劇場のデッドな音響もそのようなベームの解釈を際立たせている(録音は良好、聴きにくさはほとんどない)。「よりリラックスした演奏が好み」という方には正直あまり向かない演奏かも知れないけれど、ベームとベルリン・フィルの最高の演奏の記録はとにかく聴く価値がある。終楽章コーダのすさまじい高揚!聴衆の盛大な拍手とブラボーも納得。会場に居たかった。なお余談だが、冒頭からかなり目立つフルートを吹いているのは明らかにゴールウェイであろうが、その輝きはやはり並のフルーティストとは違う。まるでゴールウェイが第2の指揮者であるかのようだ。オケでここまでフルートが目立つのもいかがなものかと思わなくもないが、これこそがこの時代のベルリン・フィルというものだろう。ブラームスばかりにスペースを割いたけれど、モーツァルト2曲も大変見事なものだ。協奏曲では豪腕ギレリスが実にしおらしく弾いている。しかし、明らかにブラームスを聴くべきディスク。(藤原聡)
藤原聡 Satoshi Fujiwara
代官山蔦屋書店の音楽フロアにて主にクラシックCDの仕入れ、販促を担当。クラシック以外ではジャズとボサノヴァを好む。音楽以外では映画、読書、アート全般が好物。休日は可能な限りコンサート、ライヴ、映画館や美術館通いにいそしむ日々。
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