#  1179

『akiko/Rockin’ Jivin’ Swingin’』
text by Takeshi Goda


ability muse records POCS-1309  \2,200 (税別)

akiko(vo)

GENTLE FOREST JAZZ BAND
BLUE MOON QUARTET
FATS & FATS
GENTLE FOREST SISTERS
Chai-Chii Sisters

1.Come On-A My House 家へおいでよ
2.I’m Gonna Sit Right Down And Write Myself A Letter 手紙でも書こう
3.Relax Max リラックス・マックス
4.What A Little Moonlight Can Do 月光のいたずら
5.Fools Fall In Love フールズ・フォール・イン・ラブ
6.Rum and Coca Cola ラム・アンド・コカ・コーラ
7.I’m Walkin’ アイム・ウォーキン
8.Exactly Like You イグザクトリー・ライク・ユー
9.Blues No.8 ブルース・NO.8
10.Sh-Boom シュ・ブーン
11.Mr.Sandman ミスター・サンドマン
12.I’ve Got You Under My Skin あなたはしっかり私のもの
13.Goody Goody グッディ・グッディ

Produced by akiko

スウィングやジャイヴの名曲を通してジャズ本来の生命感を取り戻す試み

10年前、筆者は新宿や下北沢のライヴハウスで開催されていたガレージロック(*)・イベントへ足繁く通っていた。60年代ビートロックやグループサウンズへの愛情溢れる初期衝動そのままの荒削りなロックンロールと、レトロでサイケな60'sファッションが魅力だった。特にガールズバンドのキュートな魅力に惚れ込み、今で言えばアイドルオタクに通じる情熱で追いかけたりもしたものだ。しかし衝動性が高いだけに燃焼も激しいので、解散したり路線変更したりで、お気に入りのバンドが少なくなったこともあり、いつしかそうしたイベントに足を運ぶことはなくなった。

それから10年経った今年1月30日に、1986年の結成以来ガレージロックの女王的存在として活動を続けるガールズバンド、The 5.6.7.8's(ザ・ファイヴ・シックス・セヴン・エイツ)の12年ぶりのレコード発売記念ライヴが六本木SuperDeluxeで開催された。2003年にクエンティン・タランティーノの映画『ビキニ・キルVol.1』に出演したことで世界的に知られる彼女達のワンマンライヴを観るのは10年ぶりで、会場には昔馴染みの50/60年代ファッションに身を包んだ観客が集まった。

バンド演奏の合間にDJがプレイする楽曲は、60年代よりも古い、ロックンロールというよりスウィング、ドゥワップ、ジャイヴと呼ばれる楽曲が多かった。キャブ・キャロウェイ、ルイ・ジョーダン、ルイ・プリマといったオールディーズ以前のジャンプ・ブルースは、外国人客が1/3を占める満員のガレージロック・ファンのお気に入りで、ダンス大会の盛り上がりを見せた。

2001年にVerveレーベル初の日本人女性アーティストとして華々しくデビューしたジャズ・シンガーakikoは、高校時代はロック系のクラブ・イベントの常連だったという。デビュー作こそオーソドックスなジャズ・ヴォーカル・アルバムだったが、その後須永辰緒、小西康陽、ブッゲ・ヴェッセルトフトなどクラブ系のクリエイターとコラボして新感覚のジャズを生み出した彼女が、自らのルーツと言えるジャンプ&ジャイヴに挑戦したアルバムが2005年の『リトル・ミス・ジャズ・アンド・ジャイヴ』だった。当時筆者が通ったガレージロック・イベントと同時代に、少し離れたところで「READYMADE JAZZ & JIVE」というイベントをやっていた小西康陽がプロデュース。集まる人種に違いはあるが、愛好する音楽は共通していた。

それから10年経ってakiko自身のプロデュースでスウィングやジャイヴの名曲を歌ったアルバムが本作『ロッキン・ジャイヴィン・スウィンギン』。10年ぶりに再びルーツに回帰したきっかけは、5曲で共演するビッグバンドGENTLE FOREST JAZZ BANDとの出会いであろう。「踊る指揮者」の異名をとるトロンボーン奏者ジェントル久保田率いる彼らは、2007年の結成以来「踊れるスウィングジャズ」を追求するユニークな若手楽団。さらに2組の個性派コンボと2組の女性コーラス・グループを交えて展開するグッド・オールド・ミュージックは、お洒落にコーティングされてはいるものの、ダンス音楽として誕生したジャズ本来の生命感を取り戻す試みに違いない。それはまた、ガレージロックの初期衝動にも繋がることは言うまでもない。(剛田武)


*註:ガレージロックとは、ガレージ(車庫)で練習するアマチュアバンドが多かったことに由来する名称である。現象的には、1960年代前半におけるビートルズやローリング・ストーンズ、ザ・フー、キンクスなどのイギリス出身バンドによる、いわゆる「ブリティッシュ・インヴェイジョン」の強い影響を受けたアメリカの若いバンド群主導による、初期のロックンロールへの回帰の要素が強い草の根的ムーヴメントである。(Wikipediaより)

剛田 武 Takeshi Goda
1962年千葉県船橋市生まれ。東京大学文学部卒。レコード会社勤務。
ブログ「A Challenge To Fate」 http://blog.goo.ne.jp/googoogoo2005_01

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FIVE by FIVE 注目の新譜


NEW1.31 '16

追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley

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#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
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#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣


COLUMN
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi

#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報 シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻


音の見える風景
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カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子

及川公生の聴きどころチェック
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#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
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#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)

オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美

ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
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INTERVIEW
#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義

CONCERT/LIVE REPORT
#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
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