#  1186

Curtis Nowosad/Dialectics
text by Nobuto Sekiguchi


Cellar Live CL010115

Curtis Nowosad (drums)
Jimmy Greene (tenor and soprano saxophones)
Derrick Gardner (trumpet)
Steve Kirby (bass)
Will Bonness (piano)

1. Speak No Evil (Wayne Shorter)
2. Empirically Speaking (Curtis Nowosad)
3. Dialectics (Curtis Nowosad)
4. 159 & St. Nick (Curtis Nowosad)
5. A Casual Test (Curtis Nowosad)
6. Reconciliation (Curtis Nowosad)
7. Bye-Ya (Thelonious Monk)
8. Gleaning & Dreaming (Curtis Nowosad)
9. I Remember You (Victor Schertzinger/Johnny Mercer).

Recorded at: Musirex Studios, Winnipeg, Manitoba on June 17 & 18, 2014.
Produced: Curtis Nowosad

21世紀のハードバップ・グループがまたひとつ

 アルバム・ジャケットを見て、さて、カナダ生まれのリーダー、CURTIS NOWOSADはどう読むのか悩んだ。あてずっぽであれこれ考えていたが、あるサイトで本人が「know-a-sad」と読んでほしいとのことなので、ここではノウアサドと表記する。
 アルバム・タイトルがまた硬くて「弁証法」ときた。これはけっこう小難しいのではと些か身構えたのだが、ウェイン・ショーター作の一曲目<SPEAK NO EVIL>を聴いてそれは杞憂に終わった。60年代以降、モード、ボサノバ、ジャズロックを含むフュージョン、フリーなどが衆目を集めると、比例するようにストレートアヘッド、ネオハードバップ、ハードバップリヴァイバル(ニューシングなんてのもあった)といった動きも絶えることなく続いていて現在に至っているが、本作は正にその延長上にあり、時代の香りも感じさせられるのだ。サイドを固めるメンバーからもそれはうかがえる。
 ノウアサドはフュージョン、ロック、ポップスまで手がけるオールラウンダーだが、他のメンバーのプロフィールを見ると頷けるところが多い。TS、SSのジミー・グリーンはホレス・シルバーで、TPのデリック・ガードナーはカウント・ベイシー、Pのウィル・ボネスはメイナード・ファーガソン、Bのスティーブ・カービーはサイラス・チェスナット、といった著名グループでの実績の持ち主たちだ。言うなれば手練れ集団であり、ジャズの醍醐味であるスポンテニアスなインプロが堪能できる。全9曲のうち、先のW.ショーターの1曲目とT.モンクの7曲目<BYE―YA>、J.マーサーの9曲目<I REMEMBER YOU>の3曲以外の6曲はすべてノウアサドのオリジナルだが、ドラマーの作とは思えない曲作りが魅力的である。
 J.グリーンは音域を広くとった、アグレッシヴなソロが印象的で、8曲目の<CLEANING & DREAMING>ではソプラノサックスを披露している。1曲目と、9曲目の<I REMEMBER YOU>がベストだろうか。TPのD.ガードナーは近年ベイシー・バンドの一員として来日もしている。特段のハイノート・ヒッターではないが滑らかで力強いフレーズが抜群の安定感に裏打ちされて心地よい。リズム陣もごきげんで、PのW.ボネスは2曲目、5曲目、7曲目でのプレイが心地よい。概してドラマーがリーダーのアルバムは荒っぽく賑やかなものが多いが、ここでは、しっかりノウアサドがソロスペースを確保しながらも全体としてはウェルバランスをこころがけていたのか、うるさく感じさせることがない。
 クールでちょっと懐かしいジャズ空間に浸れるおすすめ作品である。(関口登人)

関口登人 Nobuto Sekiguchi
1960年頃からジャズを聴き始める。1968年早大法学部卒 在学中はモダンジャズ研究会に所属。以後、あのころの感動を求めて、ン十年聴き続けているが、聴き続けるしかないのかもしれない。

WEB shoppingJT jungle tomato

FIVE by FIVE 注目の新譜


NEW1.31 '16

追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley

FIVE by FIVE
#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣


COLUMN
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi

#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報 シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻


音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美

カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子

及川公生の聴きどころチェック
#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
#265 『中村照夫ライジング・サン・バンド/NY Groove』 (Ratspack)
#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)

オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美

ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)

INTERVIEW
#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義

CONCERT/LIVE REPORT
#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
#874「マーク・ジュリアナ・ジャズ・カルテット」神野秀雄
#875「ノーマ・ウィンストン・トリオ」神野秀雄


Copyright (C) 2004-2015 JAZZTOKYO.
ALL RIGHTS RESERVED.