#  1187

『Clarence Penn & Penn Station/Monk: The Lost Files』
text & photos by Takehiko Tokiwa


Origin Records ORIGIN 8674

Clarence Penn (ds)
Chad Lefkowitz-Brown (ts)
Donald Vega (p)
Gerald Clayton (rhodes, 5)
中村恭士 (b, el-b)

1. Well You Needn't
2. Green Chimney
3. Evidence
4. Friday the 13th
5. I Mean You
6. In Walked Bud
7. Hackensack
8. Bemsha Swing
9. Think of One
10. Rhythm-a-Ning
11. Solato's Blues

Recorded by Clarence Penn & Tom Tedesco at Penn Station Studio, Brooklyn NY and Tedesco Studio, Paramus NJ on February 21 & March 2, 2012
Produced by Clarence Penn

 クリス・クロスからリリースされた前作『Dali in Cobble Hill』は、シュールレアリストの画家サルヴァドール・ダリの印象に、クリス・ポッター(ts,ss)、アダム・ロジャース(g)ら同世代の俊英達と取り組んだ快作だった。同時期に録音された本作は、ジャズのシュールレアリストとも言うべきセロニアス・モンク(p)の諸作品に、弱冠25歳のチャド・レフコウィッツ−ブラウン(ts)、中村恭士(b)、ジェラルド・クレイトン(p)ら若手や、中堅のドナルド・ヴェガ(p)を擁したグループで、強いリーダー・シップを発揮して録音したアルバムだ。モンクの曲に挑むというアイディアを思いついたとき、テスト・ランとして小学校一年の娘さんの学校で演奏したら、子供たちから大きな反響を得て、このプロジェクトを推進することを決意したという。愛児の名前を冠した<Solato's Blues>のみがオリジナル、あとはすべてモンク・スタンダードだ。セロニアス・モンクの独特の空間を生かした作曲には、様々なリズム・パターンに対応できるフレキシビリティがある。ペンは様々な変拍子、ファンク・リズムを駆使し、レフコウィッツ−ブラウンやヴェガがメロディアスなソロをのせ、中村がどっしりと支える。多くのプレイヤー達が愛奏した、モンクス・チューンズに新たな命が宿る。1984年にハル・ウィルナーが、錚々たるメンバーを集めて制作したモンク・トリビュートの最高傑作ともいえる『That's The Way I Feel Now - A Tribute To Thelonious Monk』から30年、クラレンス・ペンは、パーソナルな視点から、モンクス・ミュージックの新たな魅力を再発見したと言えよう。
 ジャズ・アット・リンカーン・センターのジャズ・クラブ、ディジース・クラブ・コカ・コーラでのリリース・ギグでは、デイヴ・ダグラス(tp)・グループの同僚マット・ミッチェル(p)がヴェガに替わって参加。ペンが高く才能を評価している若手シンガー、チェルシー・ジャクソンがシット・インして<Round Midnight>をしっとりと歌い上げ、グレゴア・マレ(harmonica)がオブリガードをつけた。けっしてモンクの未発表曲が発見されたわけではない、意味深なタイトル”Monk: The Lost Files”の由来も明かされた。ライナー・ノートにも書かれているので、このアルバムがリリースされるまでの過程を知ることが出来る。(常盤武彦)

チャド・レフコウィッツ−ブラウン チェルシー・ジャクソン クラレンス・ペン
中村恭士 グレゴア・マレ マット・ミッチェル
ミッチェル、中村、レフコウィッツ−ブラウン、ペン クラレンス・ペン マレ、ミッチェル、ジャクソン、中村、ペン

写真撮影 2015年2月10日 @ディジース・クラブ・コカ・コーラ

常盤武彦 Takehiko Tokiwa
1965年横浜市出身。慶應義塾大学を経て、1988年渡米。ニューヨーク大学ティッシュ・スクール・オブ・ジ・アート(芸術学部)フォトグラフィ専攻に留学。同校卒業後、ニューヨークを拠点に、音楽を中心とした、撮影、執筆活動を展開し、現在に至る。著書に、『ジャズでめぐるニューヨーク』(角川oneテーマ21、2006)、『ニューヨーク アウトドアコンサートの楽しみ』(産業編集センター、2010)がある。

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