# 1188
『Eddie Henderson/Collective Portrait』
text & photos by Takehiko Tokiwa
Smoke Sessions Records SSR-1501 |
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Eddie Henderson (tp)
Gary Bartz (as, except 4,5,7,9)
George Cables (p, rhodes)
Doug Weiss (b)
Carl Allen (ds)
1. Sunburst
2. Dreams
3. Morning Song
4. Morning Song
5. Beyond Forever
6. Beyond Forever
7. Together
8. Ginger Bread Boy
9. Spring
10. Zoltan
Recorded & Mastered by Roman Klun at Sear Sound, Studio, NYC on May 14, 2014
Produced by Paul Stache.
アッパー・ウェストサイドのジャズ・クラブ"SMOKE"が主宰するレーベル、スモーク・セッションズ・レコードは、前9作を、クラブでのライヴ・レコーディング、もしくはオーディエンスなしの、クラブでのワン・ルーム・レコーディングにこだわってきた。記念すべき10作目の本作は、長年”SMOKE”のロースターに名を連ねているヴェテラン、エディ・ヘンダーソン(tp)を迎え、舞台をアコースティック・サウンドで定評高いレコーディング・スタジオ、シェア・サウンドに移して録音された。エンジニアは、もちろん名手ロマン・クルンである。ヘンダーソンが共演者に選んだのは、40年来のコラボレイターの、ジョージ・ケイブルス(p, kb)とゲイリー・バーツ(as)でフロントを固め、ニューヨークのローカル・ギグでよく起用しているファースト・コールのリズム・セクション、ダグ・ワイス(b)とカール・アレン(ds)。意外にもこの5人のユニットは初顔合わせとのこと。レコーディングの前には、当然”SMOKE"でギグがあった。
アルバムのラインナップが興味深い。75年にヘンダーソンがブルーノートLAからリリースしたジャズ・ロックの金字塔『Sunburst』からタイトル曲の再演、77年の『Coming Through』からケイブルスの<Beyond Forever>と<Morning Song>の再演は現代の視点から、新たな息吹をもたらす。またヘンダーソンのメンターだったフレディ・ハバード(tp)の<First Light>や、ウッディ・ショウ(tp)の<Zoltan>、マイルス・デイヴィス(tp)の名演で知られるジミー・ヒース(ts)の<Ginger Bread Boy>のオーマージュ・プレイも自らのルーツをさかのぼる。デューク・ピアソン(p)の<You Know I Care>は、ジョー・ヘンダーソン(ts)の『Inner Urge』で聴いて以来、長年の練習曲であったが、今回初めてグループで取り上げたとのこと。<Together>は、ナツコ夫人が結婚20周年を記念して書いた曲。内助の功が溢れる一曲である。ツアーで同行した、ポーランド人ピアニストで建築家のレスゼック・クラコウスキのリリカルなバラード<Spring>も、エンディングへの盛り上がりを演出する。ヘンダーソンのオリジナル<Dream>は、70年代前半のアート・ブレイキー(ds)&ジャズ・メッセンジャーズ在籍時代に、ブレイキーに励まされて書いた曲だ。若き日に聞いたマイルスの金言"A collective portrait is better than a self-portrait"(個人制作よりも、集団制作のほうが素晴らしい)に従い、シンプルなモチーフを、グループ全員でメロディアスな曲へと発展させる手法をとっている。それから40年以上の時が流れ、ヘンダーソンはマイルスの手法で再び本作を完成させたと言える。カール・アレンに代わり、ビリー・ドラモンド(ds)が参加したアルバム・リリース・ギグでも、<Sunburst><Morning Song><Zoltan>が演奏された。秀逸なローズのバッキングや、往時と変わらないシャープなプレイのケイブルス、ヘンダーソンと白熱のソロ・バトルを聴かせるバーツ、そして中堅世代のリズム陣が、見事なCollective Portraitを写しだした。(常盤武彦)
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ゲイリー・バーツ | エディ・ヘンダーソン | ビリー・ドラモンド |
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ジョージ・ケイブルス | エディ・ヘンダーソン | ダグ・ワイス |
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写真撮影 2015年2月8日@スモーク、NYC
常盤武彦 Takehiko Tokiwa
1965年横浜市出身。慶應義塾大学を経て、1988年渡米。ニューヨーク大学ティッシュ・スクール・オブ・ジ・アート(芸術学部)フォトグラフィ専攻に留学。同校卒業後、ニューヨークを拠点に、音楽を中心とした、撮影、執筆活動を展開し、現在に至る。著書に、『ジャズでめぐるニューヨーク』(角川oneテーマ21、2006)、『ニューヨーク アウトドアコンサートの楽しみ』(産業編集センター、2010)がある。
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#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣
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