# 1194
『SOKOLOV/ザルツブルク・リサイタル2008』
text by Satoshi Fujiwara
Deutsche Grammophon |
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グリゴリー・ソコロフ(ピアノ)
モーツァルト:ピアノ・ソナタ第2番ヘ長調 K.280 (189e)
モーツァルト:ピアノ・ソナタ第12番ヘ長調 K.332 (300k)
ショパン:24の前奏曲 op.28
(アンコール)
スクリャービン:詩曲 op.69-1
ショパン:マズルカ ヘ短調 op.68-2
スクリャービン:詩曲 op.69-2
ショパン:マズルカ 嬰ハ短調 op.63-3
ラモー: 新クラヴサン組曲から『未開人』
バッハ/ソコロフ編:主イエス・キリストよ、われ汝に呼ばわる BWV.639(オルガン小曲集から)
録音:2008年7月30日、ザルツブルク、モーツァルト・ハウス
エグゼクティヴ・プロデューサー:フランコ・パノッツォ
様々なところで喧伝されているソコロフの録音嫌い、ツアー嫌いは皆さんご存知だろうから今さら触れないが、来日してくれないものだからこちらからヨーロッパくんだりまで聴きに行ったらキャンセルされたという笑うに笑えないような知人の話もあるこのピアニスト、まさかのDGデビュー盤は2008年ザルツブルク音楽祭でのライヴ。
これがやはりと言うべきなのか、凄い。NAÏVE録音、または若き日のライヴなどでの「寄らば斬る」というようなあからさまにピリピリした雰囲気は消えている。しかし、その強靭な意志と造形力はむしろ内面化しているように思われるのだが、それはショパンの24の前奏曲に顕著だ(NAÏVEにも録音しているので比較されたい)。一聴さりげない。分り易い安易な身振りはこれっぽっちも見せないが、その沈滞した静けさの中に秘められた表現の深さがただごとではない。1曲1曲が、例えるならば水面は穏やかで淡々と平和なのに底知れぬ深度と危険を秘めた湖のような趣なのだ。その意味では、例えばあからさまにマニエリスティックなポゴレリッチの演奏よりも高度なレヴェルにまで到達してしまっているのかも知れない(全くタイプは違うが)。モーツァルトのソナタでも、表面的には変わったことをしている訳でもないのだが何とも言えぬ品格、風格に満ち満ちている。それでいて典雅さにも欠けてはいない。テンポはむしろ速めなのに(しかしメカニックの完璧さには舌を巻く。例えばトリルの速さ、正確さ、粒)。6曲も繰り出されるアンコールもまた絶品揃いで、筆者は特に最後のJ.S.バッハ<主イエス・キリストよ、われ汝に呼ばわる>に感銘を受けた。聴衆の沸き方も尋常ではないが、それも無理はないと思わせる。これだけ古典性と表現性を共存させられるピアニストなどなかなかいないように思う(この辺り、ヴェデルニコフに共通するものを感じる)。
誰か来日公演を実現させて頂けませんかね?(藤原聡)
藤原聡 Satoshi Fujiwara
代官山蔦屋書店の音楽フロアにて主にクラシックCDの仕入れ、販促を担当。クラシック以外ではジャズとボサノヴァを好む。音楽以外では映画、読書、アート全般が好物。休日は可能な限りコンサート、ライヴ、映画館や美術館通いにいそしむ日々。
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#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣
:
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
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#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報
シスコ・ブラッドリー
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