# 1198
『Miguel Zenón/Identities are Chageable』
text & photos by Takehiko Tokiwa
miel music |
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Miguel Zenón Quartet
Miguel Zenón (as)
Luis Perdomo (p)
Hans Glawischinig (b)
Henry Cole (ds)
"Identities " Big Band
Will Vison, Michael Thomas (as)
Semir Zarif, John Ellis (ts)
Chris Cheek (bs)
Mat Jordrel, Michael Rodriguez, Alex Norris, Jonathan Powell (tp)
Ryan Keberle, Alan Ferber, Tim Albright (tb)
1. De Donde Vienes? (Overture)
2. Identities Are Changeable
3. My Home
4. Same Fight
5. First Language
6. Second Generation Lullaby
7. Through Culture and Tradition
8. De Donde Vienes? (Outro)
Recorded by Max Ross at Systems Two, Brooklyn on March 18 & 19, 2014.
Produced by Miguel Zenón.
プエルトリコ出身のサックス・プレイヤー、ミゲール・ゼノンの9枚目のリーダー作で、初のビッグバンド作品。ゼノンは、サードアルバムの『Jibaro』から前作の『Oye!! Live in Pueto Rico』まで、自己のルーツを音楽で追求してきた。1997年にバークリー音大進学で故郷をあとにしたときに出逢ったアメリカのプエルトリカン同胞達の、自らの伝統や文化に対する高い誇りに感銘を受け、21世紀のニューヨーク・シティに於けるプエルトリカンとは?という問いを常に自らに語り続けていたという。プエルトリコは1917年にアメリカの自治連邦区となった。以来プエルトリコ人は、アメリカとヴィザの制限なしに自由に渡航できることになり、現在ニューヨーク・メトロポリタン・エリアには120万のプエルトリコ系移民が暮らし、本国外では最大規模のコミュニティを形成している。本作はゼノン自らによる、家族、友人、ミュージシャン仲間、学者、アーティストら7人のニューヨーク在住のプエルトリカンに、プエルトリカンとしてのアイデンティティ、故郷、アフリカ系のルーツ、言語(英語かスペイン語か)、次世代、音楽という6つのテーマでのインタビューと、同じテーマで書き下ろした6つの楽曲(+イントロとアウトロの2曲)がシンクロする、コンセプチュアルな作品である。
長年行動を共にしているルイス・ペルドモ(p)、ハンス・グランウィシュリング(b)、ヘンリー・コール(ds)のクァルテットが紡ぎ出す複雑な変拍子のポリリズムの上で、5サックス、4トランペット、3トロンボーンのホーン・セクションが、壮大な世界観を描き、ゼノンのサックスが縦横無尽にスリリングに疾走する。ホーン・セクションのジョン・エリス(ts)、ティム・オルブライト(tb)もアグレッシヴなソロをとる。ここ数年、ラージ・アンサンブルの大作が多くシーンに登場しているが、新たな意欲作が加わった。現時点でのミゲール・ゼノンのオリジナル音楽と、アイデンティティの探求の、最も深いポイントに到達した作品である。
ニューヨークのプエルトリカン居住区内ある、ブロンクスのホストス・コミュニティ・カレッジで行われたコンサートでは、クァルテットの演奏のバックに、ゼノンによるインタビューを含むデヴィッド・デンプフルフに構成されたヴィデオ・インスタレーションが上映され、ミゲール・ゼノンのもつコンセプト、ヴィジョンがアルバム以上に明確に伝えられた。ニューヨークに於けるプエルトリコ人のアイデンティティを探求する旅は、まだ続くのだろう。(常盤武彦)
関連リンク Miguel Zenón http://www.miguelzenon.com
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ミゲール・ゼノン・クァルテット | ミゲール・ゼノン | ルイス・ペルドモ |
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ハンス・グランウィシュリング | ヘンリー・コール | ミゲール・ゼノン・クァルテット |
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ミゲール・ゼノン |
写真撮影 2015年3月20日 @レパートリー・シアター、ホストス・コミュニティ・カレッジ
常盤武彦 Takehiko Tokiwa
1965年横浜市出身。慶應義塾大学を経て、1988年渡米。ニューヨーク大学ティッシュ・スクール・オブ・ジ・アート(芸術学部)フォトグラフィ専攻に留学。同校卒業後、ニューヨークを拠点に、音楽を中心とした、撮影、執筆活動を展開し、現在に至る。著書に、『ジャズでめぐるニューヨーク』(角川oneテーマ21、2006)、『ニューヨーク アウトドアコンサートの楽しみ』(産業編集センター、2010)がある。
追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley
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#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣
:
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi
#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報
シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻
音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美
カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子
及川公生の聴きどころチェック
#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
#265 『中村照夫ライジング・サン・バンド/NY Groove』 (Ratspack)
#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)
オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美
ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)
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#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義
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#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
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