ヴィジェイ・アイヤー(p)と並び、非西洋音楽から現代ジャズにアプローチするインド系アーティストのムーヴメントを巻き起こし、優秀なプレイヤーを輩出してきたことで知られるジャック・ディジョネット(ds)のスペシャル・エディションに起用されて注目を集めるルドレッシュ・マハンサッパ(as)が、自らのジャズ・ルーツ、チャーリー・パーカー(as)を巡る旅に出た。マハンサッパは、ストレートにパーカー・ナンバーをカヴァーすることはしない。”Bird Calls”とタイトルされた5曲のソロ、デュオの小品をアクセントにちりばめ、8曲のオリジナル曲を配した。”Talin is Thinking”には、”Parker's Mood”のリフの断片が登場し、パーカーの”Steeplechase”はインディアン・ラーガ”Gopuram”へと転生する。すべてのオリジナル曲が、パーカーの換骨奪胎である。パーカー没後、暫くして、オーネット・コールマン(as,tp,vln)が登場し、パーカーのブルース・フィールとリズム・ストラクチャーの上で、メロディが自由奔放に踊るフリー・ジャズを創造したが如く、マハンサッパは、パーカー・ミュージックを21世紀の彼独自の視点で再構築した。パートナーに選んだのは、長年の腹心フランソワ・マーティン(b)に、デイヴ・ダグラス(tp)のクィンテットで多彩なプレイで支えている、マット・ミッチェル(p)とルディ・ロイストン(ds)だ。そしてディジー・ガレスビー(tp)の難役は、弱冠20歳のアダム・オファリル(tp)。父、アルトゥーロ・オファリル(p)が「三代に渡ってノイズをまき散らしてるんだ」と豪語する、サラブレットの神童である。複雑なリズム・ストラクチャーを持つマハンサッパの難曲を、メロディアスに凌駕する。ジャズ・スタンダードに於けるリリース・ギグではピアノがボビー・アヴェイ、ドラムスがジョーダン・ペリソンの布陣だったが、スピード感溢れるスリリングなマハンサッパのフレージングに、オファリルは端正なプレイで、バード＆ディズのような見事なコンビネーションを聴かせていた。奇しくも2015年は、チャーリー・パーカー生誕95周年。バードのDNAが、21世紀型の進化を遂げた。（常盤武彦）

関連リンク　
Rudresh Mahanthappa: http://rudreshm.com