2000年代初頭から、ラヴィ・コルトレーン(ts,ss)・クァルテット、ラッセル・マローン(g)・クァルテットや、双子の兄弟のマーカス・ストリックランド(ts,ss)のグループで、力強いグルーヴと繊細なドラミングで、ファースト・コール・ドラマーの地位を築いてきたE.J.ストリックランド。2009年に、マーカスとのプライヴェート・レーベル、ストリック・ミュージックから『In This Day』をリリースし、自らのリーダー・クインテットを結成、リズミックでメロディアスなオリジナルで、バンド・リーダーとしてのポジションも確立してきた。その5年間の活動の成果がセカンド・アルバムの本作だ。不動のメンバー、マーカス・ストリックランド、ジャリール・ショウ(as)、ルイス・ペルドモ(p)に、新たにデイヴ・ダグラス(tp)のグループや自己のグループで活躍するリンダ・オー(b)が加入し、進化したグループ・アンサンブルを聴かせる。
　ドラム・ソロのイントロでオープニングを飾る”Ride”の、ストリックランドの堂々たるトータル・アーティストとしての決意表明で幕を開け、ポリリズムの曼荼羅が展開される。”Transcendence”の変拍子も、グルーヴが違和感なく包み込む。”Ballad for All Mankind”では、オーのベース・ラインがサウンドをリードし、また美しいベース・ソロをも聴かせ、触発されたストリックランドも豪快さと繊細さを併せ持つドラム・ソロをとる。オーは同じくバラードの”Midnight's Clearing”でも、グルーヴを生み出すだけでなく、サウンドをカラーリングするプレイで、クインテットのサウンドに新たなテイストを加えている。唯一のカヴァー曲、シダー・ウォルトン(p)の”Hindsight”も、ドラムが前面にでながら、アンサンブルのバランスはパーフェクトだ。”Bomba for Leel and Max”では、ニックネームが冠されたマーカスとショウの二人が壮絶なサックス・バトルを聴かせる。ペルドモも随所で、シャープなコンピングと、熱いソロを奏でる。日本では、ロバート・グラスパー(p,kb)らを中心に、ヒップホップとの融合や、オルタナティヴ化が現在のニューヨークの主流であるかの如く語られる昨今だが、骨太なストレートアヘッド・ジャズここにありと宣言する快作だ。（常盤武彦）

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E. J. Strickland: http://www.ejstrickland.com