#  1213

『Joe Fiedler Trio/I'm In』
text & photos by Takehiko Tokiwa


Multiphonics Music MM 002

Joe Fiedler (tb)
Rob Jost (b)
Michael Sarin (ds)

1. Grip
2. Erstwhile
3. In Walked Cleo
4. Moving In Silence
5. The New Denizens
6. I'm In
7. Completely 'peccable
8. The Box
9. Tensegrity

Recorded by Joe Marciano at Systems Two, Brooklyn, NY on January 12, 2015.
Produced by Joe Fiedler

 ピッツバーグ出身で、現在のニューヨークのビッグバンド・シーンでファースト・コールのトロンボーン奏者ジョー・フィドラーの、トリオとしては4作目の作品。1993年にニューヨーク進出から、フィドラーは、エディ・パルミエリ(p)らのラテン・グループ、ミンガス・ビッグバンドなどのジャズ/ブルース系、そしてセシル・テイラー(p)らフリー・ジャズ系とボーダーレスな活動を繰り広げてきた。本作も、この3つの要素にファンク・ミュージックが加わり、ハーモニーの制約がないフレキシブルなリズム・ストラクチャーの上で、絶妙にブレンドされている。<Erswhile>のイントロでは、マルチフォニック奏法(重音奏法、声とトロンボーンの音で同時に演奏する)のトーンと、ベースのアルコが絡み合い、独特の音空間へ誘う。タイトル・チューンの<I'm Inn>でもマルチフォニック奏法が、効果的に生かされている。プランジャー・ミュートを駆使したオープニング・チューンの<Grip>や<Completely 'peccable>では、ファンキー&ブルージー・サイドにスポットが当たる。ラテンを隠し味にしたスウィングの<In Walked Cleo>は、愛娘に捧げた曲だ。全編を通じてメロディアスなトロンボーンのインプロヴィゼーションを聴くと、フィドラーが人気子供番組の『セサミ・ストリート』のアレンジメントを過去5シーズン手がけているのも頷ける。アヴァンギャルドとポピュラリティー、リズムの多様性を内包した、魅力的なアルバムである。

 4月10日のニューヨークのジャズ・ギャラリーでのリリース・ギグでも、改めてフィドラーのヴァーサタイルなメロディ&リズムに、フレキシブルに対応するロブ・ホスト(b)とマイケル・サリン(ds)の瞬発力溢れるグルーヴが、印象的であった。美しいトライアングルを描く、ユニットである。(常盤武彦)

関連リンク
Joe Fiedler
http://www.joefiedler.com

ジョー・フィドラー ロブ・ホスト マイケル・サリン
ジョー・フィドラー・トリオ ジョー・フィドラー

常盤武彦 Takehiko Tokiwa
1965年横浜市出身。慶應義塾大学を経て、1988年渡米。ニューヨーク大学ティッシュ・スクール・オブ・ジ・アート(芸術学部)フォトグラフィ専攻に留学。同校卒業後、ニューヨークを拠点に、音楽を中心とした、撮影、執筆活動を展開し、現在に至る。著書に、『ジャズでめぐるニューヨーク』(角川oneテーマ21、2006)、『ニューヨーク アウトドアコンサートの楽しみ』(産業編集センター、2010)がある。

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