近年、ソロ、トリオ、キューバの伝説的ピアニストである父マニュエル・ヴァレラSr.とのプロジェクト、そしてグラミー賞にもノミネートされたユニット”New Cuban Express"と、八面六臂の活躍で怒濤の勢いでアルバム・リリースを続ける、キューバ出身のピアニスト、マニュエル・ヴァレラ。本作は､彼の10枚目のリーダー作にして、コネティカット州ニュー・ヘイヴンのファイアー・ハウス12で収録された、初のライヴ・アルバムである。パートナーには、オーストリア出身のファースト・コール・ベーシスト、ハンス・グランウィシュリングと、リーダー、サイド・メン双方で活躍するEJ・ストリックランド(ds)が務め、ラテン色を抑えて、ヴァレラのコンテンポラリー・ジャズ・プレイヤーの側面にスポットを当てた作品である。敬愛するウェイン・ショーター(ts,ss)の＜Footprints＞と、ピエトロ・マスカーニのオペラ、カヴァレリア・ルスティカーナの間奏曲を除くと、すべて最近のオリジナル曲で固められている。＜Wayne＞（もちろんショーターに捧げた曲）と＜Lirico＞はヴァレラが初めて書いたオリジナルの再演であり、その高い作曲能力はキャリアの初期から発揮されていて、現在の曲とも遜色がない。アップテンポのテクニカル・チューンから、リリカルなバラードまで、そのヴァーサタイルなピアノ・スタイルを発揮している。的確な音程と力強いグルーヴを生み出すグランウィッシュリング、スウィンギーにプッシュするストリックランドの激しいインタープレイと、美しいアンサンブルのコントラストも聴きどころである。
　アメリカとキューバの国交回復により、今後キューバからは、さらなる優れたアーティストのアメリカ進出が期待される。1990年代後半に渡米したヴァレラらが確立したコンテンポラリー・キューバン・プレイヤーのポジションの重要性が増してゆくだろう。

　4月29日のジャズ・スタンダードのライヴは、アルバムの熱気をさらにパワーアップして再現し、激しいインタープレイが聴けた。創造力のおもむくままに、マニュエル・ヴァレラのミュージック・ジャーニーは続く。（常盤武彦）

関連サイト
Manuel Valera
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