# 1219
『ショスタコーヴィチ:交響曲第7番 ハ長調 Op.60「レニングラード」』
text by Satoshi Fujiwara
PENTATONEレーベルはロシア・ナショナル交響楽団でショスタコーヴィチの交響曲全曲録音を進行させているが、このシリーズがユニークなのは曲によって指揮者が違う点であろう。今回の第7番『レニングラード』は何と飛ぶ鳥落す勢いのパーヴォ・ヤルヴィである(パーヴォがこのオケをどれだけの頻度で振っているのかは知らないが)。その演奏はいかにもフレッシュである。冒頭からテンポは速く重々しさが全くない。リズムは沈滞せずに常に弾んでいる。異様な音像の引き締まり方だ。例の「ボレロ」まがいの「進軍」以降も相当に速い。また、第3楽章のような抒情的な箇所においても深刻さや内省的な表現に傾かない代わりに、各楽器の響きの冴え冴えとした原色的で鮮烈な生かし方、様々なパートが交錯する際の立体的な音響構築の上手さが冴え渡る。その音彩感覚はパーヴォならではだ。お察しの通り、この指揮者は曲を殊更に政治的文脈から語ろうとはしていない。あくまで「音楽」として扱う。時代はとうに21世紀であり、多かれ少なかれ現在の指揮者はこういうスタンスではあろうが、パーヴォの行き方はそれにしても徹底している。また、ありがちな「物語」に全く拘泥しないストレートな解釈であるが故に楽曲の異様なパロディ性が逆に浮き彫りになっているとも言える(終楽章のコーダ以降の完璧かつ圧倒的な高揚と妙な冷静さの同居などに筆者はそれを感じる)。全曲通じての感想は、非常に新鮮な印象を与える名演と評するにやぶさかではないものの、楽曲と一体化したようなカタルシス的高揚を求める方には不満かも知れない。まあいずれにせよ問題提起的1枚ではあるので、特にショスタコ好きは聴かずに済ます訳には行くまい。ご自身の耳でお確かめを。SACDハイブリッド、音質は非常に優秀。(藤原聡)
藤原聡 Satoshi Fujiwara
代官山蔦屋書店の音楽フロアにて主にクラシックCDの仕入れ、販促を担当。クラシック以外ではジャズとボサノヴァを好む。音楽以外では映画、読書、アート全般が好物。休日は可能な限りコンサート、ライヴ、映画館や美術館通いにいそしむ日々。
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