アッパー・ウェストサイドのジャズ・クラブ”Smoke”で、毎夜繰り広げられる熱演を、レコーディング・スタジオのハイ・クオリティのサウンドで濃縮してパッケージにした、スモーク・セッションズ・レコーズ。その最新作は中堅トロンボーン・プレイヤーのスティーヴ・デイヴィスの、3管編成のセクステットのJ.J.ジョンソン讃歌だ。自らに大きな影響を与えたアイドルのJ.J.ジョンソン・トリビュートにいつかは取り組もうと決意したが、時は熟していないと思いながら20年の時が過ぎ去ったと、デイヴィスは語る。1年半ほど前に”Smoke"で、このレコーディング・メンバーでJ.J.ジョンソン・トリビュートのギグを催し、遂に時は熟したと思い、レコーディングを決意したと言う。ジョンソンのオリジナル曲、愛奏曲を中心に、クァルテット編成で歌心たっぷりに聴かせるバラードの＜Lament＞と＜There Will Never Be Another You＞を除き、3管編成で、ビッグバンドのようなアンサンブルの厚みと、コンボのインティメイト感を併せ持つアルバムだ。アレンジはジョンソンのオリジナルに、デイヴィスのアイディアを少々付加したものである。メンバーには、19歳の頃のデイヴィスをバンドに登用して道を切り開いてくれた、メンターのエディ・ヘンダーソン(tp)、60年代初期にジョンソンのグループに在籍して薫陶を受けたハロルド・メイバーン(p)の両ヴェテランに、盟友エリック・アレキサンダー(ts)、ナット・リーヴス(b)、ジョー・ファーンズワース(ds)を起用した。メイバーンが、64年にジョンソンのウォーミング・アップ・フレーズをモチーフに書いた＜Mr. Johnson＞を再演している。意表を突いたのカヴァー曲＜When the Saint Go Marching In＞は、デイヴィスが、かつてブルーノート・ニューヨークのジョンソンのギグで聴いた曲だ。Aフラットのアップ・テンポのペダルの上で、ジョンソンがBフラットでメロディを執るというアイディアに驚かされたそうだ。

　リリース・ギグでは、ヘンダーソンに代わりオーストラリアの教職からニューヨークのシーンに復帰した旧友ジム・ロットンディ(tp)、若手のジェイソン・ティーズマン(ds)が参加。1960年代を彷彿させるハード・バップが繰り広げられた。

　スティーヴ・デイヴィスを、少年時代からインスパイアし続けているJ.J.ジョンソンの音楽。デイヴィスは、今こそJ.J.の素晴らしい音楽が演奏され、人々に届けられる時だと語る。その熱い思いが一枚のアルバムに結実した。（常盤武彦）

【関連リンク】
Steve Davis
http://www.stevedavis.info

Smoke Session Records
http://smokesessionsrecords.com