# 1234
『マンボ・イン/ファイヴ・ブラザーズ』
text by 小西啓一 Keiichi Konishi
MIP/アオラ MIP-4641 2,315円(税別) |
スティーヴ・サックス(baritone and soprano sax, flute)
ジョナサン・カッツ(piano, pianica)
伊藤寛康 (bass)
佐藤英樹 (congas)
鈴木義鏤(timbales, guiro, maracas)
1. Caravan (Juan Tizol)
2. Summertime (George Gershwin)
3. And Then She Stopped (Dizzy Gillespie)
4. Nocturne Opus 9 #2 (Frederic Chopin)
5. Green Sauce (Jonathan Katz)
6. La Mentira (Alvaro Carrillo)
7. Mogamigawa Funauta (Japanese traditional)
8. Five Brothers (Gerry Mulligan)
9. Puerto Padre (Emiliano Salvador)
10. Kojo no tsuki (Rentaro Taki)
Produced by Steve Sacks
Recorded March 11 and 13, 2015 at Studio Leda, Tokyo
Engineered by Yuki Mizutani
Mixed April 2015 by Hiroyasu Ito (Musashino Sounds)
at MS Studio
Mastered May 2015 by Andy Bevan at Ahatanada Studios
このユニットならではの適度な心地良さと熱さ、なによりの余裕
ラテン・ジャズ・サックスのリジェンド、マリオ・バウザの銘曲<マンボ・イン>をユニット名にした米日混在のラテン・ジャズ・グループ“マンボ・イン”待望の第2弾が登場した。ティト・プエンテ楽団などでも鳴らした、日本在住のハーバード大出身インテリ・サックス奏者、スティーヴ・サックスをリーダーに、しょっぱなから世界一周の音楽旅に飛び出した5人のラテン・ジャズ・アミーゴ達(『アラウンド・ザ・ワールド』)。彼らはそのマンボ漫遊記が各方面から注目を集め、一躍日本のラテン・ジャズ・ユニットの期待の星としてマークされることとなった。スティーヴ、ピアノのジョナサン、そして“グルーポ・チェベレ”などの日本を代表するラテン・ジャズ・ユニットの中核だった手練れベースの伊藤,コンガの佐藤、そしてチンバレス鈴木といった不動&鉄壁の5人の仲間達。
今回はじっくり本拠地に腰を据えようと図ったようで、ローランド・カーク等も取り上げていた滝廉太郎の至高の作品<荒城の月>(ジョナサンのピアニカが抜群のサウダージ感を醸し出す)、そしてなんとあの<真室川舟歌>まで(スティーヴの知的にして土の匂いもするフルート・プレーが冴える)、快適なラテン・ジャズに仕立て上げ、全員が和気あいあいとした雰囲気でラテンすることを愉しんでいる。
この和モノ2曲と前作にもあったショパンのラテン・ジャズ化チューン、これらがこの和洋折衷ラテン・ジャズ・バンドを特徴付けるとも言えそうだが、やはりその真価は<キャラバン><ラ・メンティラ>、そしてジョナサンのオリジナル<グリーン・オニオン>といった本格ラテン・ジャズ・ナンバーにある。デビュー作でも冒頭の<マンボ・イン>がバッチリと決まっていたが、ここでも<キャラバン>が見事な“掴み”を現出、残りナンバーへの期待感を昂める。彼らの過度に熱くなり過ぎない良い加減なラテン熱量、このユニットならではの適度な心地良さと熱さ、なによりの余裕。これらは今作でも充分に発揮されており、プレーする彼らだけでなく、ファンのぼくたちをも十二分に満足させてくれる。そして今作で初めて聴かれる、ジョナサンのピアニカ。これが好い味わいを加味しており、スティーヴもそのフルート・プレーは、この楽器のマスターと呼ぶに相応しいもの。
スティーヴさん、このアルバム引っ提げてまたぼくのジャズ番組に遊びに来て下さいね(ぼくの本職はラジオ・プロデューサー)。その時は担当の女性アナも辟易としていた、あの“おやじギャグ”は厳禁ですよ。よろしく。
* 参考リンク;
# 1070『マンボ・イン/マンボ・アラウンド・ザ・ワールド』
http://www.jazztokyo.com/five/five1070.html
小西啓一 Keiichi Konishi
ジャズ・ライター/ラジオ・プロデューサー。本職はラジオのプロデューサーで、ジャズ番組からドラマ、ドキュメンタリー、スポーツ、経済など幅広く担当。傍らジャズ・ジャパン、ジャズ・ライフ誌などのレビューを長年担当するジャズ・ライターでもある。好きなのはラテン・ジャズ、好きなミュージシャンはアマディート・バルデス、ヘンリー・スレッギル、川嶋哲郎、ベッカ・スティーブンス等々。
追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley
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#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣
:
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi
#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報
シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻
音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美
カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子
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#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
#265 『中村照夫ライジング・サン・バンド/NY Groove』 (Ratspack)
#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)
オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美
ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)
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#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義
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#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
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