#  1235

『奥平真吾/The New Force+1 This is New〜Live at Shinjuku PIT INN』
text by 望月由美 Yumi Mochizuki


ピットインレーベル Mシリーズ
PILM-0005 2,500円(税別)

奥平真吾(ds)
岡淳(sax、fl)
堀秀彰(p)
楠井五月(b)
馬場孝喜(g)

1.ディス・イズ・ニュー(K.Weill)
2.ラヴ・レターズ(V.Young)
3.ユー・ドント・ノウ・ホワット・ラヴ・イズ(G.DePaul)
4.ザ・ウエイ・ユー・ルック・トゥナイト(J.Kern)
5.サマータイム(G.Gershwin)
6.ファースト・トリップ(R.Carter)
7.ナイト・アンド・デイ (C.Porter)

プロデューサー:奥平真吾
共同プロデューサー:品川之朗(ピットインミュージック)
エンジニア:菊地明紀(ピットインミュージック)
録音:2014年11月13日 新宿ピットインにてライヴ録音

奥平真吾のスマートなセンスが随所に光る好アルバム

ジャケット写真の奥平真吾のポートレートを見ていると往年のトニー・ウイリアムスのイメージがオーバーラップしてくる。といってもマイルス・クインテット時代のトニーではなく、VSOP以降の壮年期のトニーである。トニーは17歳でマイルスに抜擢されたというが一方の奥平は9歳で神童と騒がれジャズ・シーンでクローズアップされた。二人に共通しているところはデビュー当時からドラム奏法をきちっとマスターしていた点である。その上でリズムの源泉である若々しさと躍動感によってグループに今までになかった新鮮な刺激を与え続けたのである。
奥平真吾は1966年生まれで今年49歳、バンド・リーダーとして自己のグループを率いて大活躍だったころのトニーとほぼ同年代にさしかかっている。

19年に及ぶ長いニューヨーク生活を終え2010年に帰国して結成した自己のグループ「奥平真吾 THE FORCE」も5年になる。適時メンバーもかえながら『THE FORCE』(ピットインレーベル、2008)、『THE FORCE/I didn’t know what about you』(ピットインレーベル、2013)をリリースし、本アルバム『奥平真吾/The New Force+1 This is New〜Live at Shinjuku PIT INN』が3作目になるが、すべて新宿ピットインでのライヴ録音である。
デビュー当時から新宿ピットインをホームとして活躍してきている奥平真吾のピットインへの思いがつまったライヴ・アルバムであり、ジャズはライヴにあり、をあらためて実感する。

前作の『奥平真吾/THE FORCE Live At PIT INN/I didn’t know what time it was』ではワンホーン・カルテットであったが今回はワンホーンに加えて+1としてギターを入れてのクインテットで、曲によってはカルテットやトリオに編成を変え、それぞれの局面で奥平の華麗なテクニックが展開そして躍動するリズムとでバンドを鼓舞している。
ライヴということもあってダイナミックなドラミングが展開するが歯切れの良さ、サウンドの美しさによって決してうるさくならないところが奥平真吾の美学なのかもしれない。

とりわけ、テナーが抜けたギター・カルテットでの(4)<ザ・ウエイ・ユー・ルック・トゥナイト>では馬場孝喜(g)のソロでのバッキングの妙、堀秀彰(p)のバックでのマイルスが自伝の中でフィリーズ・ショットと名付けたリム・ショット、そしてさらにエレガントなドラム・ソロと奥平自身にスポットを当てたスリリングな展開が繰り広げられる。
またハービー・ハンコックが『SPEAK LIKE A CHILD』(BLUE NOTE、1968)で演奏した(6)<ファースト・トリップ>ではピアノ・トリオの編成でリズム・セクションにスポットをあて、堀秀彰(p)、楠井五月(b)をフィーチャー、さらにピアノとドラムとで交わされるスリル満点の掛け合いが粋なジャズ・ドラムの妙味を伝える。
デビュー当時から新宿ピットインとともに歩んできた奥平真吾の新作『奥平真吾The New Force+1 This is New Live at Shinjuku PIT INN』は全編にわたって奥平真吾のリーダーシップが発揮され、結果、奥平のスマートなセンスが随所に光る好ライヴ録音である。

望月由美 Yumi Mochizuki
FM番組の企画・構成・DJと並行し1988年までスイングジャーナル誌、ジャズ・ワールド誌などにレギュラー執筆。 フォトグラファー、音楽プロデューサー。自己のレーベル「Yumi's Alley」主宰。『渋谷 毅/エッセンシャル・エリントン』でSJ誌のジャズ・ディスク大賞<日本ジャズ賞>受賞。

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