#  1236

『Charlie Hunter Trio / Let The Bells Ring On』
text & photos by 常盤武彦 Takehiko Tokiwa


Charlie Hunter Music

Charlie Hunter (7-String g)
Curtis Fowlkes (tb)
Bobby Previte (ds)

1. Anthem: USA
2. These People?
3. Pho-Kus-On-Ho-Ho-Kus
4. Let The Bells Ring On
5. Hillbilly Heroine Chic
6. Welcome To Nutley
7. Fellini Farm Team
8. Ojai Housecoat Of Arms
9. Vernel
10. Spence

Recorded by Fabian Rucker at Three Horses In A Wood, Claverack, NY on January 5~7, 2015.
Produced by Charlie Hunter

異能の変則ギタリスト、チャーリー・ハンターのグルーヴと美しいメロディが融合した最新作

ギターとベースを同時演奏する7弦ギターを駆使して、独自の音楽をクリエイトし続けてきた異能の変則ギタリスト、チャーリー・ハンターの最新作。80年代から90年代に「ラウンジ・リザース」や「ジャズ・パッセンジャーズ」でニューヨーク・アンダーグラウンド・シーンで名を馳せたカーティス・フォークス(tb)と、同じくアンダーグラウンド・シーンのカリスマ・ドラマー/コンポーザーであるボビー・プリヴィット(ds)という二人の旧友とのトリオを結成した。それぞれに共演を繰り返してきた三人だが、このコンビネーションでの演奏は意外にも初めてだそうだ。
チャーリー・ハンターの音楽性の特徴は、ベース弦が3弦、ギター弦が4弦張られた7弦ギターの楽器的制約が、プラスに作用していることにあるだろう。若き日に、ハモンド・オルガンのようなサウンドをギターでプレイしたいという野望から、変則ギターの演奏の試行錯誤を繰り返して、確立されてきた。ベースとギターを同時に弾くため、極端な速弾きや複雑なラインなどテクニカルな方向に走ることなく、どっしりとしたグルーヴとシンプルなメロディ、少ない音数で効果的にスペースを生かすコード・ワークによって唯一無二のスタイルを確立した。その音楽はジャズの範疇を超え、2000年にはR&Bのビッグ・スター、ディアンジェロ(vo,kb)が1年の時をかけて制作したアルバム『ヴードゥー』に三顧の礼を持って迎えられている。
チャーリー・ハンターの音楽は、長年グルーヴ・コンシャスな作品と、メロディ・コンシャスな作品の間を振り子のように揺れながら、進化を続けてきた。前作がハンターの出身地のサンフランシスコ・ベイ・エリア時代からの盟友スコット・アマンドラ(ds)とのデュオ作だっただけに、今回はメロディ・コンシャスな作品かと思われたが、見事にグルーヴと美しいメロディが融合した作品となった。シンプルなブルースが渋くきまるタイトル・チューンの<Let The Bells Ring On>,カーティス・フォークスのメロディ・センスが大きくフィーチャーされ、映画のイメージを喚起する<Fellini Farms Team>、複雑なグルーヴとラインがモザイクのように交錯する<Hillbilly Heroine Chic>、エンディングを飾るゴスペル教会を彷彿させるワルツの<Spence>など、三人のコラボレーションが、ハンターの絶妙なオリジナルによって、リユニオンにとどまらない新たな音楽を創造している。ハンターは、この三人の音楽をロードを巡ることによって、さらに高い次元に達することを確信していると語る。ツアー前半の6月3日のニューヨーク、ジョーズ・パブに於けるリリース・ライヴでも、その萌芽が聴きとれた。今年の後半にかけて、サウンドはさらにタイトに、フレキシブルに拡大していくのだろう。次回のニューヨーク・ギグが期待される。

【関連リンク】
Charlie Hunter : http://www.charliehunter.com

Joe’s Pub チャーリー・ハンター・トリオ
チャーリー・ハンター(g,b) カーティス・フォークス(tb) ボビー・プリヴィット(ds)

* 写真は、ジョーズ・パブでのリリース・ライヴより

常盤武彦 Takehiko Tokiwa
1965年横浜市出身。慶應義塾大学を経て、1988年渡米。ニューヨーク大学ティッシュ・スクール・オブ・ジ・アート(芸術学部)フォトグラフィ専攻に留学。同校卒業後、ニューヨークを拠点に、音楽を中心とした、撮影、執筆活動を展開し、現在に至る。著書に、『ジャズでめぐるニューヨーク』(角川oneテーマ21、2006)、『ニューヨーク アウトドアコンサートの楽しみ』(産業編集センター、2010)がある。

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