#  1242

『纐纈雅代/Band of Eden』
text by 齊藤 聡 Akira Saito


Suisui Record Suisui-001/bridge

纐纈雅代 (sax, vo, mbira, chorus, kaossilator)
内橋和久 (g, daxophone)
伊藤啓太 (b)
外山明 (ds)
special guest
スガダイロー (p)

1. ポレピヤソウ
2. ラーの大船
3. 卑弥呼
4. イアルの野
5. うちゅうのはな
6. 海のワルツ
7. カラスの結婚式
8. 天のお家にひかる御石をならべましょう
9. ヤドナシ・ブルース
10. アンコールワット

2015.3.4 新宿ピットインでのライヴ録音
サウンド・エンジニア:ZAK

何しろ纐纈雅代という人はバイタリティ溢れるサックス奏者だ。

「秘宝感」という奇妙な名前のグループでは、リーダー斉藤良(ドラムス)やスガダイロー(ピアノ)が生み出すグルーヴの中、セクシーに踊る熱海宝子の横で、イケイケのコスチュームに身を固めて吹きまくっていた。また、鈴木勲(ベース)との共演でも、渋谷毅オーケストラでの客演でも、個性しかないような強烈なメンバーたちにまったく迫力負けしていなかった。とにかく、ぶりぶりと鳴らし切るサックスの音が、快感を超えてカタルシスを呼び起こすのである。

そして「Band of Eden」というグループ。結成は2011年だという。以前、新宿ピットイン昼の部でライヴを観たときには、ちょっと脱力するような歌と相まって、面白くはあるが隙間もある音楽だと感じていた。

それがどうだ。本盤では、見事なほどにグループとしての一体感を獲得し、聴く者が震えるほどの勢いを見せ付けている。

内橋和久が得意とするダクソフォン(木片を弓で擦る楽器)は、まるで宇宙人のコーラスのようであり、斜め上を走るギターとともに、メンバー全員が思う存分踊ることができるプレイグラウンドを提供する。スガダイローのピアノは、凶悪かつ悦びに満ちた殺気を発散している。そして、分厚い伊藤啓太のベース、どこからどのタイミングで音が攻めてくるか予測不能な外山明のドラムス。改めて見ると、このグループも超個性派集団である。

纐纈雅代のサックスはというと、相変わらず、管をびりびりと震わせるまで鳴らし切っている。音の「みっちり感」が素晴らしいのである。そして、天へ天へと心を折ることなく挑み続ける。これは聴いていてちょっと感動的だ。

良く知られているように、ギリシャ神話において、イカロスは「蝋で固めた羽根」によって太陽へと飛翔し、そのために、太陽の熱によって羽根が失われ、悲劇が訪れる。しかし、この人の背中にある羽根の蝋はまったく溶けそうにない。

纐纈雅代の新しいグループは「勾玉族」だという。ひょっとすると、原始の生命力を希求する、縄文人の末裔かもしれない。(齊藤 聡)

齊藤 聡(さいとうあきら)
環境・エネルギー問題と海外事業のコンサルタント。著書に『新しい排出権』など。ブログ http://blog.goo.ne.jp/sightsong

WEB shoppingJT jungle tomato

FIVE by FIVE 注目の新譜


NEW1.31 '16

追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley

FIVE by FIVE
#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣


COLUMN
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi

#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報 シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻


音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美

カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子

及川公生の聴きどころチェック
#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
#265 『中村照夫ライジング・サン・バンド/NY Groove』 (Ratspack)
#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)

オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美

ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)

INTERVIEW
#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義

CONCERT/LIVE REPORT
#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
#874「マーク・ジュリアナ・ジャズ・カルテット」神野秀雄
#875「ノーマ・ウィンストン・トリオ」神野秀雄


Copyright (C) 2004-2015 JAZZTOKYO.
ALL RIGHTS RESERVED.