# 1242
『纐纈雅代/Band of Eden』
text by 齊藤 聡 Akira Saito
何しろ纐纈雅代という人はバイタリティ溢れるサックス奏者だ。
「秘宝感」という奇妙な名前のグループでは、リーダー斉藤良(ドラムス)やスガダイロー(ピアノ)が生み出すグルーヴの中、セクシーに踊る熱海宝子の横で、イケイケのコスチュームに身を固めて吹きまくっていた。また、鈴木勲(ベース)との共演でも、渋谷毅オーケストラでの客演でも、個性しかないような強烈なメンバーたちにまったく迫力負けしていなかった。とにかく、ぶりぶりと鳴らし切るサックスの音が、快感を超えてカタルシスを呼び起こすのである。
そして「Band of Eden」というグループ。結成は2011年だという。以前、新宿ピットイン昼の部でライヴを観たときには、ちょっと脱力するような歌と相まって、面白くはあるが隙間もある音楽だと感じていた。
それがどうだ。本盤では、見事なほどにグループとしての一体感を獲得し、聴く者が震えるほどの勢いを見せ付けている。
内橋和久が得意とするダクソフォン(木片を弓で擦る楽器)は、まるで宇宙人のコーラスのようであり、斜め上を走るギターとともに、メンバー全員が思う存分踊ることができるプレイグラウンドを提供する。スガダイローのピアノは、凶悪かつ悦びに満ちた殺気を発散している。そして、分厚い伊藤啓太のベース、どこからどのタイミングで音が攻めてくるか予測不能な外山明のドラムス。改めて見ると、このグループも超個性派集団である。
纐纈雅代のサックスはというと、相変わらず、管をびりびりと震わせるまで鳴らし切っている。音の「みっちり感」が素晴らしいのである。そして、天へ天へと心を折ることなく挑み続ける。これは聴いていてちょっと感動的だ。
良く知られているように、ギリシャ神話において、イカロスは「蝋で固めた羽根」によって太陽へと飛翔し、そのために、太陽の熱によって羽根が失われ、悲劇が訪れる。しかし、この人の背中にある羽根の蝋はまったく溶けそうにない。
纐纈雅代の新しいグループは「勾玉族」だという。ひょっとすると、原始の生命力を希求する、縄文人の末裔かもしれない。(齊藤 聡)
齊藤 聡(さいとうあきら)
環境・エネルギー問題と海外事業のコンサルタント。著書に『新しい排出権』など。ブログ http://blog.goo.ne.jp/sightsong
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