# 1249
『Césile McLorin Salvant / For One to Love』
text & photos by 常盤武彦 Takehiko Tokiwa
Mack Avenue Records MAC 1095 |
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Césile McLorin Salvant (vo)
Aaron Diehl (p)
Paul Sikivie (b)
Lawrence Leathers (ds)
1. Fog
2. Growlin' Dan
3. Stepsister's Lament
4. Look at Me
5. Wives and Lovers
6. Left Over
7. The Trolley Song
8. Monday
9. What's the Matter Now?
10. Le Mal de Vivre
11. Something's Coming
12. Underling
Recorded by Todd Whitelock at Avatar Studios, Studio A, NYC
Produced by Al Pryor
彗星の如くシーンに現れた、21世紀の歌姫のパーソナリティを追求した第2作
セシル・マクローレン・サルヴァントは、フロリダ州マイアミにハイチ人の父とフランス人の母の間に生まれ、多彩な文化背景に囲まれて成長した。幼少時から地元コーラスで歌い、高校卒業後、南フランスのエクス=アン=プロヴァンスに留学。1000年以上前に吟遊詩人達が、西洋のラヴ・ソングを同地で歌い始めたと伝えられる。サルヴァントはフランス法と、クラッシック、バロック歌唱法を専攻し、ジャズをジャン=フランシス・ボネル(cl)に学び、2010年にアメリカに帰国する。21歳の時、セロニアス・モンク・コンペティションで優勝し、その圧倒的な歌唱力で、一躍注目を集めたサルヴァントは、2013年にデビュー・アルバム『WomanChild』リリースした。同アルバムは、ダウンビート誌で、女性ヴォーカル部門のJazz Album of the Year、女性ヴォーカル部門ライジング・スター賞を始め、各メディアで絶賛され、センセーションを巻き起こした。ウィントン・マルサリス(tp)は「ビリー・ホリデイ、サラ・ヴォーン、エラ・フィッツジェラルドのビッグ3の系譜を継ぎ、拡大する可能性を持つ才能」と高く評価し、全米、ヨーロッパ、日本へのツアーで世界中にその才能を知らしめた。それから2年の時を経て発表されたセカンド・アルバムは、デビュー以来共演しているアーロン・ディール(p)・トリオとのコラボレーションを深めた内省的な作品となった。
弟のキャブ・キャロウェイ(vo)の影に、その素晴らしさが隠れてしまったブランチ・キャロウェイ(vo)をカヴァーした<Grovin’ Dan>、伝説のブルース・シンガー、ベッシー・スミス(vo)ら、Strong Womanを祝福した作品とサルヴァントは語る。<Left Over>でのディールとの緊密なデュオは、ただただ美しい。5曲のオリジナルは、オールド・ナンバーとも違和感なく融け込み、サルヴァントの作曲能力の高さも誇示する。アルバム・カヴァー、インナー・スリーヴもすべて彼女のイラストレーションで彩られている。「音楽は私を選んだ、でもイラストを描くことは私が選んだ」。とのこと。メッセージ性の強いヴォーカルに、独特の世界観を示すイラストが一体となって、この若きヴァーチュオーソの内的宇宙へと誘う。
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Cécile McLorin Salvant @ 54 Below, June 27,2013 |
常盤武彦 Takehiko Tokiwa
1965年横浜市出身。慶應義塾大学を経て、1988年渡米。ニューヨーク大学ティッシュ・スクール・オブ・ジ・アート(芸術学部)フォトグラフィ専攻に留学。同校卒業後、ニューヨークを拠点に、音楽を中心とした、撮影、執筆活動を展開し、現在に至る。著書に、『ジャズでめぐるニューヨーク』(角川oneテーマ21、2006)、『ニューヨーク アウトドアコンサートの楽しみ』(産業編集センター、2010)がある。
追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley
:
#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣
:
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi
#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報
シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻
音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美
カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子
及川公生の聴きどころチェック
#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
#265 『中村照夫ライジング・サン・バンド/NY Groove』 (Ratspack)
#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)
オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美
ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)
:
#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義
:
#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
#874「マーク・ジュリアナ・ジャズ・カルテット」神野秀雄
#875「ノーマ・ウィンストン・トリオ」神野秀雄
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