#  1251

『Old Time Musketry / Drifter』
text by Akira Saito 齊藤 聡


NCM East NCM40139

Adam Schneit (ts, cl)
JP Schlegelmilch (accordion, p)
Phil Rowan (b)
Max Goldman (ds, tambourine, melodica)
Brian Drye (tb on “The Turtle Speaks”)

1. February March
2. Kept Close
3. Odd Ray
4. Drifter
5. Weird Waltz
6. The Turtle Speaks
7. Pastorale
8. Two Painters
9. Transmitter Park

Recorded December 9th-10th 2013 at Peter Karl Studios, Brooklyn
Recorded, Mixed, & Mastered by Michael Perez-Cisneros
Cover photo: Claire Fellman
Design: Connie Wang

アメリカ内部からの「古き良きアメリカ」探索

「Old Time Musketry」は、NY・ブルックリンを拠点に活動するグループであり、2009年に結成された。本作は、2012年に吹き込まれた『Different Times』(Steeple Chase)に続く2作目である。

メンバーはみな若いのだが、面白いことに、かれらが創り出す音楽は、グループ名からも想像できるように、「古き良きアメリカ」なのである。そこには、一聴ひと昔前の、心地よいアンサンブルと各人のソロとがバランスよく配置されたジャズがあり、また、昔日のアメリカン・フォークがある。

考えてみると、この方向性は何も目新しいものではない。オーネット・コールマン、チャーリー・ヘイデン、ドン・チェリーらが指向した「フリー・ジャズ」は、実のところ古きアメリカへの回帰でもあった。また、かれらに影響を受けたであろうキース・ジャレットの「アメリカン・カルテット」も、そうだった。さらには、ビル・フリゼールなどの名前も思い出すことができる。すなわち、新たなエネルギーをもってルーツを掘り起こす音楽が、眩しい光を発したわけである。

そして、この「Old Time Musketry」も、その系譜に連なる。アダム・シュナイトやJP・シュレゲルミルヒはヨーロッパをルーツとする名前のようだが、アメリカ生まれである。アメリカ内部からのアメリカ探索ということか。

中音域の音色でバランスの取れた音を出すシュナイトのテナーサックスとフィル・ローワンのベースは、聴いていてとても気持ちが良い。マックス・ゴールドマンのドラムスは骨太であり、悪戯に過激にならず、ときにマーチ風であり、ときに歌うようだ。そして、シュレゲルミルヒのピアノとアコーディオンが、グループのサウンドに決定的なノスタルジアを付け加えている。異国たるアメリカの懐かしさは、なぜか、日本にいてこれを聴く者の懐かしさでもあるに違いない。

奇を衒った編成でも、ソロでもない。しかし、結果として紛れもなく現在のジャズとなっていることは不思議であり、とても愉快なことだ。親しみやすく、心の奥のどこかを絶えずくすぐられ、まったく退屈にならないサウンドである。

齊藤 聡(さいとうあきら)
環境・エネルギー問題と海外事業のコンサルタント。著書に『新しい排出権』など。
ブログ http://blog.goo.ne.jp/sightsong

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FIVE by FIVE 注目の新譜


NEW1.31 '16

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#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
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COLUMN
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#10 Contents
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・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報 シスコ・ブラッドリー
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