#  1257

『Jeff Denson Trio / Jeff Denson plus Lee Konitz』
text by Kayo Fushiya 伏谷佳代


Ridgeway Records RRCD001

Jeff Denson (double bass & voice)
Lee Konitz (alto sax & voice)
Dan Zemelman (piano)
Jon Arkin (drums)

1. Baby (Lennie Tristano) 3:39
2. Duet (Denson/Konitz) 5:00
3. Blue Skies (Irving Berlin) 4:51
4. East Thirty-Second (Lennie Tristano) 4:30
5. Subconscious Lee (Lee Konitz) 6:08
6. Body and Soul (Green/ Heymann,Sour&Eyton) 5:47
7. Background Music (Warne Marsh) 6:35
8. Kary’s Trance (Lee Konitz) 5:25
9. Skylark (Mercer/Carmichael) 4:49
10. 317 East 32nd Street (Lennie Tristano) 5:14
11. Subconscious Lee (Lee Konitz) 2:52

Recorded at Fantasy Recording Studios Berkeley, CA, February 5-6, 2015
Mixed by Adam Munoz, February 8-9,2015
Mastered at Headless Buddha Studios Oakland, CA, February 21, 2015, Myles Boisen
Produced & arranged by Jeff Denson

進化し続けるリー・コニッツを生き生きと捉えたジェフ・デンソン・トリオの新作

ジェフ・デンソンが立ち上げた自己レーベル”Ridgeway Records”からの記念すべき第一作。近年展開する『Jeff Denson Trio+One』プロジェクトのゲストとして2015〜16年にフィーチャーされているのが、サックスの生きたレジェンドともいえるリー・コニッツ。ジェフとリーとの出会いは2007年、以降『Lee Konitz New Quartet』のメンバーとして共演を重ねている。思えば3年前に聴いたジェフ名義のアルバム『Secret World』でも強く印象づけられたのが、傑出したコントラバスの技倆同様、そのヴォーカル・センスである。ソリッドな構築力をもつ彼の音楽を、ふわりと異次元に解き放つような不思議な魅力があるのだ。今回もその時の印象を引き継ぐものだが、もう一つの嬉しいサプライズは、リー・コニッツによるヴォーカルも加わったこと。新旧ふたりのすぐれたインストゥルメンタリストによる味わい深いスキャット・デュオも要所で堪能できる。音楽人生そのものの凝縮のようなリーの嗄れ声との絡まりは、どこかキッチュでユーモラス、しかし情熱的で、ついつい聴き手も笑みがこぼれてしまう痛快な男の世界。自分の音楽を固定せずに、つねに新境地を求めるリー・コニッツの若い精神に感服する。

さて、ジェフ・デンソンは若くしてダブルベースという楽器で個性を確立した名プレイヤーであると同時に、コンポーザーとしても非常にアカデミックなバックグラウンドを持っている。一聴して肩肘はらない気楽なノリを身上としつつも、リー・コニッツという巨人をアメリカのジャズ史のうえに投影した、かなり練られた楽曲構成がみてとれる。リーの師であるレニー・トリスターノや同門のウォーン・マーシュの作品を配しつつ、シグネチャー・ピースである“Subconscious Lee”も2テイク、そのうちひとつはコントラバス・ソロによるテイクとなっており、これはジェフによるサックスの巨匠への格好のオマージュとなっている。西海岸らしいクリアなサウンド、各プレイヤーを随所で引き立てつつも決して色褪せぬ存在感を示すベース・ライン(シンプルな一音がこのうえなく充実している)、ファンキーに拡張するリー・コニッツの世界---それらが渾然一体となった秀作。華やかなパーソネルながら、まぎれもなくベーシストのアルバムであると納得させる、ジェフ・デンソンのブレない実力派ぶりも再確認。

《関連リンク》
http://www.jeffdenson.com/
http://www.danzemelman.com/
http://www.jonarkin.net/

《関連レヴュー》
http://www.jazztokyo.com/five/five915.html
http://www.jazztokyo.com/five/five1136.html
http://www.jazztokyo.com/best_cd_2012b/best_cd_2012_inter_02.html

《Jeff Denson Trio+Lee Konitz ヨーロッパ・ツアー・スケジュール》

©James Knox

October, 02nd 21.30 h/ Angra Jazz 2015 - Festival, Azores Islands
October, 23rd 20.00 h/ Domicil, Dortmund, Germany
October, 24th 20.00 h/ Lantaren Venster, Rotterdam, NL
October, 25th 20.00 h/ Altes Pfandhaus, Cologne, Germany
October, 27th 21.00 h/ Unterfahrt, Munich, Germany
October, 28th/ Travel Hotel: Sylter Hof, Berlin
Ocotber, 29th 20.00 h/ A-Trane, Berlin, Germany
October, 30th 20.00 h/ Sendesaal, Bremen, Germany
October, 31st 20.00 h/ Porgy & Bess, Vienna, Austria

伏谷佳代 Kayo Fushiya
1975年仙台市生まれ。早稲田大学卒。現在、多国語翻通訳/美術品取扱業。欧州滞在時にジャズを中心とした多くの音楽シーンに親しむ。趣味は言語習得にからめての異文化音楽探求。JazzTokyo誌ではこれまでに先鋭ジャズの新譜紹介のほか、鍵盤楽器を中心にジャンルによらず多くのライヴ・レポートを執筆。

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