# 1270
『Mike Moreno / Lotus』
text & photo by Takehiko Tokiwa 常盤武彦
World Culture Music |
Mike Moreno (el-g, ac-g)
Aaron Parks (p, rohdes)
Doug Weiss (b)
Eric Harland (ds)
1 Intro
2 The Hills Of Kykuit
3 Lotus
4 Hypnotic
5 The Empress
6 The Last Stand
7 Can We Stay Forever?
8 Blind Imagination
9 Epilogue: The Rise
Recorded by Chris Allen at Sear Sound Recording Studios on July 2 & 3, 2015.
Produced by Mike Moreno
21世紀のジャズ・ギターのパースペクティヴが、垣間見えるマイク・モレノの新作は自身のキャリアの金字塔
2000年以降、ジャズ・ギター・シーンはポスト・カート・ローゼンウィンケル世代とも言えるギタリストが続々と登場してきて、活況を呈している。ジュリアン・レイジ(g)、ラージュ・ルンド(g)、ギラッド・ヘクセルマン(g)、マシュー・スティーヴンス(g)、ジョナサン・クライスバーグ(g)、ニア・フィールダー(g)、トム・グアナ(g)と言った面々だ。その中心人物の一人が、本作のマーク・モレノ(g)だろう。彼らは、長くジャズ・ギター・シーンに君臨している四大コンテンポラリー・ジャズ・ギタリストの、パット・メセニー(g)、ジョン・スコフィールド(g)、ビル・フリゼール(g)、マイク・スターン(g)ら、ジム・ホール(g)のDNAを受け継ぐアーティスト達が拡大してきた表現領域を、さらに押し進め、あるものは唯一無二のサウンド・スペースを構築し、またあるものはグルーヴ感溢れるラインでぐいぐいとリスナーを魅了する、多様化したスタイルを誇っている。
マイク・モレノは、ロバート・グラスパー(p,kb)、エリック・ハーランド(ds)ケンドリック・スコット(ds)、ビヨンセ(vo)と多くの優れたアーティストを輩出しているヒューストンのHigh School for the Performing and Visual Arts出身で、18歳でニューヨークのニュースクール大に進学。入学当時、アンサンブル・クラスを受け持った井上智(g)は「18歳にして、ジャイアント・ステップスなど難曲を縦横無尽に弾きこなすモンスターが現れたと、評判になった」と語っている。それから20年近い月日が流れ、モレノが2007年にファースト・アルバムをリリースして以来、本作は5枚目のリーダー作であり、ギタリストのみならず、コンポーザー、トータル・アーティストとしての成熟をいかんなく発揮している。レコーディング・メンバーに選んだのは、長年のコラボレイターのアーロン・パークス(p)、高校の同窓生のエリック・ハーランド(ds)、そしてニュースクール大の恩師でもあるダグ・ウェイス(b)だ。モレノとパークスとの共演は4枚目。パークス、モレノ&ハーランドという布陣で臨んだパークスの、ブルーノート・レコード・デビュー作『Invisible Cinema』(2008)は、モレノの今までのキャリアの中でも金字塔と言える作品であり、本作は7年の熟成を経た『Invisible Cinema Part 2』という意味も併せ持つと、モレノは語っている。
『Lotus』はすべて、マイク・モレノのオリジナルで構成されている。ソロ・アコースティック・ギターの
12月1日のジャズ・スタンダードに於けるリリース・ギグも、レコーディング・メンバーが集結した。アルバム全曲が演奏され、長年の深い信頼に結ばれたプレイヤー達のインタープレイは、アルバムで聴けるダイナミックスを、より生々しく伝えてくれた。浮遊するスペースを構築しながら、同時に鋭いラインで切りこむマイク・モレノのスタイルに、21世紀のジャズ・ギターのパースペクティヴが、垣間見えた。
関連リンク
Mike Moreno http://www.mikemoreno.com
写真は、12月1日、Jazz Standard,NYに於ける リリース・ギグより;
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
常盤武彦 Takehiko Tokiwa
1965年横浜市出身。慶應義塾大学を経て、1988年渡米。ニューヨーク大学ティッシュ・スクール・オブ・ジ・アート(芸術学部)フォトグラフィ専攻に留学。同校卒業後、ニューヨークを拠点に、音楽を中心とした、撮影、執筆活動を展開し、現在に至る。著書に、『ジャズでめぐるニューヨーク』(角川oneテーマ21、2006)、『ニューヨーク アウトドアコンサートの楽しみ』(産業編集センター、2010)がある。
追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley
:
#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣
:
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi
#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報
シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻
音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美
カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子
及川公生の聴きどころチェック
#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
#265 『中村照夫ライジング・サン・バンド/NY Groove』 (Ratspack)
#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)
オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美
ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)
:
#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義
:
#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
#874「マーク・ジュリアナ・ジャズ・カルテット」神野秀雄
#875「ノーマ・ウィンストン・トリオ」神野秀雄
Copyright (C) 2004-2015 JAZZTOKYO.
ALL RIGHTS RESERVED.