#  647

Arrigo Cappelletti & Andrea Massaria ミ Intermittenze
text by Nobu Stowe

amazon

Music Center BA236 CD

Arrigo Cappelletti (piano)
Andrea Massaria (guitar)

Intermittenze/ For Lennie/ Orsa Minore/ Spiritual Song/ Strange Blues/ Orsa Maggiore/ Persistenze/ Notturno

Recorded Live @ Casa della Musica, Trieste, Italy
Recoded on January 29th 2009
Recorded by Fulvio Zafret (Urban Recording Studio)
Produced by Alessio Brocca

2009年度サンタンナ=アレーシ・ジャズ=フェスティバルに参加した折り、ピアニストのアリーゴ・カペレッティとギタリストのアンドレア・マッサリアと親しくなる機会を得た。彼らは、そのフェスティバルで、ドラムのエンツォ・カルペンティエリを加えたトリオで演奏したのだが、ジャズの基本を踏まえつつ、前衛からフュージョンまで幅広い教養を感じさせる音楽性に、大変感心させられた。その時の事は、本誌上で既にレポート済みだ:jazztokyo.com/live-report/v233/v233.html

そのレポートで『Interferenze』と間違えて紹介したデュオ・アルバムが、本作『Intermittenze』である。タイトルの直訳は難しいが、『点灯』の意。スロヴェニア国境に近い港町、トリエステの“Casa della Musica”(音楽の家)で2009年1月29日にライブ録音され、ミラノ近郊のリッソーネという町に本拠を置くMusic Centerよりリリースされた。Music Centerは、カルペンティエリが、ジョン・チカイreedsをリーダーに制作した『Look to the Neutrio』(2008年度作品:jazztokyo.com/newdisc/643/tchicai.html)他を発表している要注目のレーベル。

カペレッティは、既にベテランの域に達し、マッサリアは、中堅として、共にイタリアでは、重要なミュージシャンである。しかし、日本では(残念ながら)ほぼ無名の存在だと思うので、少し彼らの事を紹介したい。

北イタリアのリゾート地として有名な“コモ湖”湖畔にあるコモ出身の、カペレッティは、1982年発表の『Residui』(Coop.LaPera)以降現在までに多数のリーダー作品をSplasc(h) 他のレーベルに残してきている。バール・フィリップスb、スティーブ・スワローb、ルー・ソロフtp、ジェフ・ハーシュフィールドds、ロベルト・オッタビアーノreeds等のイタリア内外のジャズ・ミュージシャンとの共演の他、有名な歌姫=ミア・マルティーニのバックといった仕事もこなしてきている。執筆活動も活発で、インプロヴィゼーションの教則本の他、ポール・ブレイpの音楽を追求した『Paul Bley, la logica del caso』(ポール・ブレイ、因果の論理)他を発表。彼のピアノには、ブレイの他、レニー・トリスターノp、ビル・エヴァンスp等を深く研究した痕跡が聞き取れるが、知的で、オリジナル性に富むスタイルで、本誌読者、特にECMファンには、アピール度が高いだろう。少し初期のチック・コリアpを思わせるところもある。彼自身によれば、前述のピアニストの他、MJQ のジョン・ルイスpの影響も多く受けたそうである。

マッサリアは、トリエステの出身で、音楽院卒業後、クラシック・ギタリストとしてキャリアをスタートさせたが、25歳の時にバーニー・ケッセルgの演奏を聞き、ジャズに開眼し、ジョー・パスg他の師事を仰いだという経歴の持ち主。ECMに録音経験のある、U.T. ガンディーdsやジョバンニ・メイヤーb等とArtesuonoやMusic Center といったレーベルに、リーダー作を発表。ケッセルをモダンにしたようなトーン(時折シンセサイザー系の音を思わす)をクラシックで培われた確かなテクニックで持って、陰影の強い、滑らかな曲線美を感じさせるプレイに特徴がある。

『Intermittenze』には、カペレッティ(5曲)とマッサリア(3曲)のオリジナル作品を収録。全体を通して冷ややかで淡い抽象絵画を思わせる楽曲・演奏が並ぶ。各曲とも優れた出来だが、特にカペレッティ作でトリスターノに捧げられた〈For Lennie〉や〈Notturno〉(夜想曲)は、特に素晴らしい。ピアノとギターの共演は、調性上の不都合が発生しやすいが、両者の和声に対するセンスと、ライン的なコンピング(伴奏)の妙で以って、高レベルのアンサンブルが具体化されている。クラブ録音だが、楽器の臨場感が良く捉えられており、音質は、問題無い。抽象的な曲想が主のため、一聴した時、地味な印象を受けるかも知れないが、聞き込む度に、彼らの優れた音楽性に魅了されていくだろう。

最近の情報では、カペレッティとマッサリアに、ドラムのミケレ・ラビア(ステファノ・バッタリアのECM作品に参加)を加えたトリオで、4月に新作を録音し、今年(2010年)の秋頃に発表予定らしい。サンタンナ=アレーシで観たトリオは、より具体的でメロディックな展開を聞かせてくれたので、期待して待つ事にしよう。

(Nobu Stowe:須藤伸義)

*『Intermittenze』は、Amazon/ディスク・ユニオン等で購入可能。

**詳細は、以下のホームページで:

MUSIC CENTER (www.musiccenterlissone.it)

Arrigo Cappelletti (www.arrigocappelletti.it)
Andrea Massaria (www.myspace.com/andreamassaria)

/www.myspace.com/chladniexperiment

WEB shoppingJT jungle tomato

FIVE by FIVE 注目の新譜


NEW1.31 '16

追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley

FIVE by FIVE
#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣


COLUMN
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi

#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報 シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻


音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美

カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子

及川公生の聴きどころチェック
#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
#265 『中村照夫ライジング・サン・バンド/NY Groove』 (Ratspack)
#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)

オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美

ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)

INTERVIEW
#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義

CONCERT/LIVE REPORT
#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
#874「マーク・ジュリアナ・ジャズ・カルテット」神野秀雄
#875「ノーマ・ウィンストン・トリオ」神野秀雄


Copyright (C) 2004-2015 JAZZTOKYO.
ALL RIGHTS RESERVED.