#  651

Die Enttaeschung
text by Kazue Yokoi

Intakt CD 166

Rudi Mahall(bcl) Axel Doerner(tp) Jan Roder(b) Uli Jannennen(ds)

  1. Rocket in the Pocket
  2. Tja
  3. Uotenniw
  4. Wiener Schnitzel
  5. Salty Dog
  6. For Quarts Only
  7. Tinnef
  8. Tu es nicht
  9. Nasses Handtuch
  10. Tatsaechlich
  11. Rumba Brutal
  12. Hopfen
  13. Schienenersatzverkehr
  14. Bruno

Recorded 2009 in Berlin

“ディー・エントイシュング”(「失望」という意味)はおそらくベルリンで最もプログレッシヴなジャズを演奏するバンドだろう。高瀬アキとの共演で知られるルディ・マハール、ジャズよりも即興音楽シーンでの知名度が高く、大友良英ニュー・ジャズ・オーケストラのメンバーのひとりでもあるアクセル・ドゥナー、そしてウリ・イェネッセンらがベルリンで出会い、94年頃に作ったバンドだ。(最初のベーシストはヨアヒム・デッテ、後にヤン・ローダーに代わった)

アレクサンダー・フォン・シュリッペンバッハの“モンクス・カジノ”も彼らとの出会いで生まれたプロジェクトで、クインテット(シュリッペンバッハ・プラス“ディー・エントイシュング”)で“モンクス・カジノ”をスタートさせてからは、カルテットではメンバーのオリジナル曲のみ演奏するようになった。

このアルバムを聴いていると1960年代にエリック・ドルフィーが試行錯誤していたある流れが伏流水となって地下に潜り、現代のベルリンでわき上がったような印象を受ける。マハールとドゥナーの2管は、さながらエリック・ドルフィー〜ブッカー・リトルのコンビのよう。作品はドイツ人らしく構造的であったり、アブストラクトなのだが、どこかモダンジャズ黄金時代に繋がっている。最近のどんなジャズCD(ただし、私が耳にしたものだけだが)よりもその時代のジャズのニオイを感じるのは、先達がやったことをなぞるのではなく、そこから汲み取ったものを自身の音楽の中で表現しているからだろう。

ここではドゥナーのジャズ・トランペットが存分に聴ける。好きなアルバムの一枚としてトニー・フラセラのLPを挙げる彼の趣向が垣間見える一方、即興演奏で聞かせるようなノン・エモーショナルなサウンドも交えているところがドゥナーらしい。マハールは楽器の特性を生かしながらも時折サックスを吹くようにバスクラリネットを吹く。「100キロしか出せない小型車があったとする。それをボクはいろいろ手を加えて180キロまで出せるようにしたんだ」とはマハールに楽器奏法について質問した時の回答。タイトながらもジャジーなグルーヴ感が失われていないのは、ローダーのベースとイェネッセンのドラムスの好サポートによるところも大きいだろう。

バンド名がまた愉快だ。「失望」という名のバンドが失望するような演奏をする筈がないのだから。久々に現代版モダンジャズを堪能した一枚である。(横井一江)

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FIVE by FIVE 注目の新譜


NEW1.31 '16

追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley

FIVE by FIVE
#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣


COLUMN
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi

#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報 シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻


音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美

カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子

及川公生の聴きどころチェック
#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
#265 『中村照夫ライジング・サン・バンド/NY Groove』 (Ratspack)
#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)

オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美

ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)

INTERVIEW
#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義

CONCERT/LIVE REPORT
#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
#874「マーク・ジュリアナ・ジャズ・カルテット」神野秀雄
#875「ノーマ・ウィンストン・トリオ」神野秀雄


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