#  655

Salif Keita-サリフ・ケイタ/La difference-ラ・ディフェロンス
text by Izumi HONGOU

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Universal Classics & jazz UCCM-1186
¥2,500(税込)2/17発売予定

サリフ・ケイタ(vo,g)
カンテ・マンフィーラ(g)
セブ・マーテル(g)
ディアラ・ケイタ(cho)
マイムナ・ケイタ(cho)
サリマタ・ケイタ(cho)
ジュリア・サー(cho)
ダイアン・ソロ(cho)
ナナ・クヤテ(cho)
オリザ(cho)

  1. La dirrerence/ ラ・ディフェロンス
  2. San Ka Na / サン・カ・ナ
  3. Seydou/ セイドゥ
  4. Gaffou / ガフウー
  5. Folon / フォロン
  6. Ekolo d’Amour / エコロ・ダムール
  7. Djele / デェレ
  8. Samigna / サミーニャ
  9. Papa / パパ

プロデューサー:パトリス・レンソン

実験的な要素を随所に盛り込んだ前作『ムベンバ』とは、幾分趣を異にした新作がリリースされた。個人的にはムベンバは手を加えすぎ、と思っていたから、どちらかというと、今度の『ラ・ディフェロンス』の方が、マリ音楽の美しさをシンプルに表現したアルバムという印象だ。

これまでのサリフの音楽は、マリのマンディング地方の様々な音楽をベースに色々な味を加えて、“サリフ・ケイタの音楽”ともいうべき音楽スタイルを確立し、そこに彼のボリューム感たっぷりのヴォーカルが組み合わさって完成され、インターナショナルに高い評価を得てきたのだと思う。今作では、“サリフ・ケイタの音楽”とも少し距離を置き、6曲目のすかっと明るい<エコロ・ダムール>を除けば、かつてないほどマンディング音楽の、さらにつきつめて、マリンケのグリオの音楽の旋律により忠実に歌っていることは、サリフの家系とグリオの関係を思えば、少々驚きに値する。とはいえ、グリオ調の歌にンゴニの伴奏は本当に無駄のない美しさといおうか(このアルバムではギターやバイオリン(?)なども加わっているけれど)、その表現者としてサリフもまたふさわしいひとり、と知らしめてくれる。還暦を過ぎて、人生の悲喜こもごもを表現するに十分な時間を積み重ねてきた結果、ともいえるのかもしれない。

もうひとつの聴きどころは、それぞれ1995年、1999年発表の<フォロン>(5曲目)、<パパ>(9曲目)が装いを変えて再収録されていることだ。とくに<パパ>は99年発表のアルバムでは、声を絞り出し、訴えかけるような歌い方が印象的だったけれど、このアルバムでは静かに語りかけるようなアコースティックな歌唱で同一の歌とは気が付きにくいほどだ。

手元のプレス・リリースには参加ミュージシャンが一部しか掲載されてないけれど、ギターの匠、カンテ・マンフィーラ他、ンゴニ(特にこのアルバムではサリフと並んでもうひとりの主役といえるくらい不可欠な存在)、バラフォンがアルバムの立て役者として存在感を発揮。個人的には、このアルバムにピアノは合わないように思うけれど、好みの問題かもしれない。

それから、日本では馴染みのないバンバラ語の歌が中心だから、できることなら日本版には歌詞の対訳、もしくは解説がついてくれているといいなあ、と思う。(本郷 泉)

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