# 665
ONDA VAGA オンダ・バガ/FUERTE Y CALIENTE フエルテ・イ・カリエンテ
text by Izumi HONGOU
『ONDA VAGA オンダ・バガ/FUERTE Y CALIENTE フエルテ・イ・カリエンテ』
アオラ・コーポレーション/ビーンズレコード
BNSCD-759 ¥2,100円 (3月21日発売予定)
1.VAGUISENIAL
2.PARQUE
3.SEQUIA DE AMOR
4.COMO QUE NO
5.ME PEGA FUERTE
6.CARTAGENA
7.HAVANA AFFAIR
8.IR AL BAILE
9.VA AL OESTE
10. GILDA
11. EL EXPERIMENTO
12. MAMBEADO
13. TE QUIERO
14. RAYADA
未知の音楽との出会いは、幾つになっても、いつもどきどき、わくわくする。わたしの場合、アジア、アフリカ、欧州、そして津軽三味線や沖縄の音楽、etc、etc。それなりに満遍なく音楽で世界一周できるかもしれないくらい多くの魅力ある音楽との出会いがあったけれど、思えばレゲエを除いた中南米方面の音楽に関しては、何故か聴く機会に恵まれてこなかった気がする。言い訳かも知れないけれど、とくに最近はネットによる情報収集が容易になった分、情報があふれすぎて自分の求める答えになかなかめぐりあえないことも少なくない。
さて、一昨年ふとしたきっかけで、クンビア、というジャンルの音楽を紹介してもらった。南米コロンビアで、19世紀後半アフリカの奴隷達から伝承された音楽と、現地のフォルクローレが融合してできたのがルーツとされ、現在ではラテンアメリカ諸国で広く演奏されている。チャッチャカ、チャッチャカと繰り返されるリズムが脳ミソをほどよく刺激し、軽いトランスに陥りそうな気持の良い音楽で、久しぶりにどきどき、わくわくを味あわせてもらった。
そして今年3月、そのクンビアにも影響を少なからぬ影響を受けた、というアルゼンチン出身のニューカマーのファーストアルバム(現地のリリースは2008年9月)、『フエルテ・イ・カリエンテ』が日本で発売されることになった。2007年1月、それぞれ別々のバンドに参加していた5人が集まって結成したバンド、Onda Vaga/オンダ・バガ (曖昧な波、という意味だそうだ)である。
メンバーはナチョ・ロドリーゲス、マルセロ・ブランコ、マルコス・オレジャーナ、トマス・フスト、ゲルマン・コーエン。先述のクンビアのみならず、欧米のロック、ルンバ、レゲエ、ハッピー・タンゴ等に影響を受けた、というサウンドは、80年代フランスで発祥、世界中のロックファンを熱狂させたゴッタ煮ロックを彷彿とさせる。ゴッタ煮ロックの進化形とでもいえるかもしれない。
メンバー達はそれぞれロック畑でキャリアを積んできたそうだが、この『フエルテ・イ・カリエンテ』では、エレクトリック・インストゥルメントを意識的に排除し、アコースティック・ギター、クアトロ(ベネズエラの4弦の弦楽器)、トロンボーン、カホン(南米諸国で広く使われている長方形のパーカッション)、その他のパーカッションと、アコースティックかつ、ルーツの音を取り入れることにこだわってアルバムを仕上げたそうだ。プレス・リリースによると、アコースティック楽器にこだわる別の理由は、箱の大小問わずどこでもライブができる身軽さにもあるとのこと、結成以来精力的にライブをこなしてるそうだから納得。
かつて一世を風靡したゴッタ煮ロックのキング、マノ・ネグラの音楽のようにスピード感や派手な展開はなく、どちらかというと淡々と曲が進んでいくのだが、だからといって決して退屈なのではなく、むしろ、うまいとか下手とか一言では形容しがたいメンバー全員のコーラスと一緒に思わず口ずさんでしまいそうな親しみ易さ、どこか牧歌的な流れに身をまかせアルバム1枚、14曲を気持ちよく聴くことができる。哀愁をおびたメロディ・ラインは、まだ行ったことのないアルゼンチンやラテンアメリカへの諸々について想像力をたくましくさせる。泥臭くもあり、スタイリッシュでもあり、粗さもあり、このアルバムはいろんな要素を含んだ宝石の原石とでもいえようか。磨き方次第で、いろんな魅力を発揮するに違いない。マノ・ネグラが出たのでついでに書けば、ボーカルをつとめたマヌー・チャオの2009年3月アルゼンチン公演では、オンダ・バガが前座をつとめたそうだ。初めてこの『フエルテ・イ・カリエンテ』を聴いたとき、もしかしたらマヌー・チャオがゲストで参加してるのではないか、と思ったくらい、オンダ・バガのメンバーとマヌ?・チャオの声質がよく似ていると感じたのは単なる偶然か、ライブの前座へと続く必然だったのか、何だか不思議なめぐりあわせを感じる。
彼らのようなバンドがけん引役となり、音の伝道師となれば、アルゼンチンの音楽シーンは予想もつかない、けれどもとびきりおもしろい変化、進化を遂げていくのだろうな、と思う。(本郷 泉)
http://www.ondavaga.net/
追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley
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#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣
:
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi
#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報
シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻
音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美
カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子
及川公生の聴きどころチェック
#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
#265 『中村照夫ライジング・サン・バンド/NY Groove』 (Ratspack)
#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)
オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美
ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)
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#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義
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#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
#874「マーク・ジュリアナ・ジャズ・カルテット」神野秀雄
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