# 689
Chladni Experiment Trio/5053
text by Nobu Stowe 須藤伸義
NBN Records 002
Chladni Experiment Trio:
Andrea Massaria (guitar)
Alessandro Fedrigo (acoustic bass)
Carlo Alberto Canevali (drums, percussion)
Protone/ Pietre che Cantano/ B1/ Claudia/ Saturno/ Open Event #1/ Matrix/ Olio su Tela/ Open Event #2/ Vincent
Recorded and Mixed in March 2009 @ NBN Studio, Rovereto
Sound Engineer: Federico Robol
Produced by Chladny Experiment Trio
サルディニア島で開催された、2009年度サンタンナ=アレーシ・ジャズ=フェスティバルに出演した折に親しくなった、アンドレア・マッサリアとアリーゴ・カペレッティのアルバム『Intermittenze』を以前紹介した:http://www.jazztokyo.com/five/five647.html。
マッサリアは、カペレッティとのデュオにドラムのミケレ・ラビア(ステファノ・バッタリアのECM作品に参加)を加えたトリオの他(新作が今年:2010年の秋頃に発表予定との事)今回紹介する“Chladni Experiment Trio”でも活動を行っている。
マッサリアの他に、ベースのアレッサンドロ・フェデリーゴと、ドラムのカルロ・アルベルト・カネバーリからなるトリオだ。カネバーリの主宰する“NBNレコード”よりの第2弾作品である。
以前も紹介したが、マッサリアは、スロベニア国境に近い港町、トリエステの出身で、音楽院卒業後、クラシック・ギタリストとしてキャリアをスタートさせたが、バーニー・ケッセルの演奏を聞き、ジャズに開眼し、ジョー・パス他の師事を仰いだという。ベースのフェデリーゴは、ハービー・シュワルツ、マーク・イーガン、アレス・タヴォラッツイ(前衛ジャズ・ロックの最高峰=“AREA”のベーシスト)やフリオ・ディ・カストリ他に師事。ステファノ・バッタリアやクラウディオ・ファソーリ他との共演で活躍している。本作では、アコースティック・ベースに専念しているが、エレクトリック・ベースも達者な様である。カネバーリは、マックス・ローチ、フィリー=ジョー・ジョーンズ、ポール・モチアン、ヨン・クリスチャンセン、トニー・オクスレー等に影響を受けたドラマー。バッタリアとのトリオの他、ケニー・ウィラー、フランコ・デアンドレア他、実力派ミュージシャンと共演してきている。
グループ名は、多分、ドイツの物理学者で音響学にも大いに貢献した、エルンスト・クラドニ(Ernst Florens Friedrich Chladni:1756−1827年)に由来すると思う。クラドニは、周波数の振動で皿の上に撒かれた砂が幾何学模様(クラドニ図形)を描く事により「音波は物体を動かす」事実を、実験的に証明した人物だ。クラドニの名前を冠するだけあって、独特な音響派的アプローチが個性的だ。2曲の即興曲を除き、予め用意されていた楽曲を素材に使っているのだが、調性が希薄で浮遊感のある、霧の中を舞っているにいる様な、白日夢然とした音世界が展開されている。こう表現すると、環境音楽やサウンド・アート系の音楽を喚起されるかも知れないが、3人のメンバーは何れもメインストリーム系の音楽でも活躍している事からも想像できるように、確かな楽理/演奏テクニックに支えられた(広義の意味での)“ジャズ”作品になっている。
NBNレコードからは、カネバーリを中心に、本誌で度々紹介しているマルチリード奏者=アキレ・スッチ(http://www.jazztokyo.com/interview/v75/v75.html)とロシア出身でイタリアで活動している、敏腕ベース奏者=ユーリ・ゴルーベフのトリオの新作が、発売予定なので、期待したい。(Nobu Stowe/須藤伸義)
*残念ながら『5053』は、現在のところ日本での購入が難しい様であるが、NBNレコードのホームページより購入可能。
**詳細は、以下のホームページで:
NBN Records (www.nbnmusic.com)
Chladni Experiment Trio (www.myspace.com/chladniexperiment)
Andrea Massaria (www.myspace.com/andreamassaria)
Alessandro Federigo (www.alessandrofederigo.com)
Carlo Alberto Canevali (www.carlocanevali.com)
***クラドニの実験/クラドニ図形のビデオ:
http://www.youtube.com/watch?v=YedgubRZva8&feature=related
http://www.youtube.com/watch?v=6rQqJZylqhY&feature=related
追悼特集
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#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣
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#10 Contents
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#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義
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