# 690
Maria's Song/Sinikka Langeland
text by 多田雅範
ECM 2127 2010
Sinikka Langeland (voice, kantele)
Lars Anders Tomter (viola)
K_re Nordstoga (organ)
Lova lova Lina
Meine Seele erhebet den Herren, BWV 648 (organ)
Ave Maria
Suite No. 1 in G major, BWV 1007: Pr_lude (viola)
The angel Gabriel greets Mary
Suite No. 1 in G major, BWV 1007: Allemande (viola)
But the angel said to her
Suite No. 1 in G major, BWV 1007: Courante (viola)
He will be great
Suite No. 1 in G major, BWV 1007: Sarabande (viola)
Mary asked the angel
Suite No. 1 in G major, BWV 1007: Menuet I & II (viola)
Even Elizabeth
Suite No. 1 in G major, BWV 1007: Suite No.1 in G major: Gigue (viola)
Vom Himmel kam der Engel Schar, BWV 607 (organ)/ I am the Lord's servant
Lova lova Lina
Fuga sopra il Magnificat, BWV 733 (organ)
Mary visits Elizabeth
Kantele
Concerto in d minor, BWV 596: I. (without tempo indication)(organ) / She was filled with the Holy Spirit
Blessed is she who has believed
Concerto in d minor, BWV 596: II. Fuga (organ)
Song of Mary
Kantele
Concerto in d minor, BWV 596: III. Largo e spiccato (organ)/ His mercy extends to those who fear him
Concerto in d minor, BWV 596: IV. (without tempo indication)(organ)
Kyrie
Partita No. 2 in d minor, BWV 1004: Chaconne (viola)/ Ave Maria
Recorded February 2008
ECMに新しい才能が登場していたのを見逃していた。ノルウェーのカンテレ奏者シニッカ・ランゲラン。カンテレという楽器はハープを横にしたような楽器で、弦をチューニングするレバーが付いている。フィンランドの民族楽器で、ランゲランはフィンランドに近いルーツがあるかもしれない。ノルウェーは地続きだし。
5月23日(日)、東京駅八重洲口徒歩3分の Salon'd TOSHIN という会場で、日本カンテレ友の会主催により、ランゲランのソロ・コンサートが開かれた。30名ほどの小さな会場で、親密な雰囲気の中、朗々とした北欧トラッドの歌声に圧倒され、カンテレのチューニングをずらすことで演出される微分音もしくはメセニーのピカソ・ギターを思わせるつまびきに瞠目させられた。伝統的なフォークの味わいに斬り込むカンテレの現代的表現。それでいて、その静かな音の織り成す必然性にはアヴァンギャルド感は皆無である。
も、もしかしたら、こういう浪曲ががなるような不協和音の自然な配置は、フォークの根源に触れているのか?カンテレとは、こげにエッジのある楽器なのか、と、おののいていたが、ECMコンプリートを備える月光茶房の原田正夫さんとECMミュージシャンに信望の厚いオフィス大沢さんからお話をうかがうに、カンテレという楽器に現代音楽やエレクトリックな表現の分野はそもそもあるのだそうだ。なるほど、すると、おそらく正統的な演奏法によるカンテレ演奏に親しんでおられる日本カンテレ友の会の皆さんは驚いてしまう演奏だったのかもしれない。
でも、ふつうに五線譜にのる伴奏としてのカンテレだったら、あ、心地よいフォークの音楽ねー、で、終わってしまうわけだし、そこはマンフレッド・アイヒャーが目をつけたただものではないカンテレの表現であり、ランゲレンのECMデビュー作『Starflowers』(ECM 1996)では、くぐもる音響トランペット奏者アルヴェ・ヘンリクセンや、トリグヴェ・サイム、アンダース・ヨルミンとの越境的なサウンドを静謐にかつ現代的に響かせている。
今年リリースされたECM第2作『Maria's Song』は、ヴィオラとオルガンを配置し、J.S.バッハの作品とオリジナルを交互に構成してゆく、クラシック・ファンにもおすすめできるECMらしい逸品に仕上がった。・・・あ、このヴィオラ奏者はケティル・ビョルンスタの『光 The Light』(タガララジオ<track 043>
参照 ■)
でも奏でているひとだ。
シニッカ・ランゲランは5月28日に札幌でもコンサートを行なう。札幌で聴いたら、また、さぞかし北欧に近い感じがして素晴らしいだろうなあ。おれの持論では、音楽は土地と感応する、土地の精神によって眼差される、裸にされたり、煮沸されたりする、と、はなはだオカルトちっくな考えがあるのだけど、それは単に湿度と空間を形成する建築素材なのだろうか。みんなと話していておいらのECMロマンチシズムに翳りが・・・。(多田雅範)
追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley
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#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣
:
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi
#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報
シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻
音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美
カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子
及川公生の聴きどころチェック
#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
#265 『中村照夫ライジング・サン・バンド/NY Groove』 (Ratspack)
#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)
オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美
ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)
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#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義
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#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
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