# 691
Matthew Shipp/4D
text by ビル・シューメイカー
Thirsty Ear THI 57192.2
Matthew Shipp (acoustic piano)
1. Autumn Leaves 2:46
2. Blue Web In Space 5:36
3. The Crack In The Piano's Egg 5:06
4. Dark Matter 2:35
5. Equilibrium 3:08
6. Frere Jacques 2:59
7. Greensleeves 2:17
8. Jazz Paradox 4:49
9. Prelude To A Kiss 3:01
10. Primal Harmonic 3:43
11. Sequence And Vibration 8:00
12. Stairs 2:57
13. Teleportation 4:17
14. What A Friend We Have In Jesus 0:54
15. What Is This Thing Called Love? 3:30
16. 4D 4:18
Recorded by Ben Manley at Roulette on May 17, 2009
*『Signal to Noise』誌 (Issue #56, Winter 2010)
『Signal to Noise』誌*でのマシュー・シップ自身の発言を鑑みても、彼の最新ソロ・アルバム『4D』 の特徴は、彼の最近の音楽やジョー・モリスとウィット・ディッケイとのトリオの解散を考慮した上で評価してみると、やや考え過ぎの所産と言わざるを得ないようだ。この新作に極度の懸念を抱くわけではないが、かといって、彼が過去に試みた以上により深遠な方法でシップ自身を内的に沈潜させるという考えを実現させるための画期的なアイディアがあるわけでもないのだ。たしかに、彼が過去に録音したスタンダードや<Equilibrium(イクィリブリゥム)>のようなオリジナルの新しい解釈が含まれてはいるが、それは『セロニアス・ヒムセルフ』(1957/Riverside)がモンクの中期の最高傑作である、と言うようなものだ。そして、そのことが、アブドゥラー・イブラヒム(註:ダラー・ブランド)がエリントンやアフリカのスピリッツを喚起するためにしばしば援用するオープン・ヴォイスのコード類を使って作曲された<Stairs(ステアズ)>のような新曲に起因するとはいわないまでも、アルバム全体の印象をゆがめてしまう結果を生んでいる。とにもかくにも、このアルバムは、シップのソロ・アルバムのカタログに新たに加わるべき1枚には違いないのである。シップの筋金入りのアンチは、<Frere Jacques(フレール・ジャック)>を揶揄し、<Autumn Leaves(枯葉)>の過剰なほどの感傷主義をあげつらい、<Greensleeves(グリーンスリーブス)>の風格ある演奏をいかめしいと非難するだろう。
話をややこしくすることになるのだが、シップが古い歌に手を付けたといっても単に分解しただけではないかとの総括に異議を唱える1曲として<Prelude to a Kiss(プレリュード・トゥ・ア・キス)>がある。この曲をシップは、これまで多くのピアニストがエリントンの楽曲を扱ってきたやり方で、品よく慈しむように弾いているのである。しかし、何通りかのスタイル・ゾーンを逸脱した<Jazz Paradox(ジャズ・パラドックス)>のような楽曲ではいつものような過激さをみせるのだ。つまり、シップの過半のアルバムがそうであるように、このアルバムでのシップもまたジャズ界のさらに頼りがいのある避雷針の役目を果たしていることに変わりはないのである。シップはすでに多くのことを語ってきたが、これからも語るべき多くの内容を持っているアーチストである、という明白な事実である。何らかの最終結論を出すまで、シップに20年の猶予を与えようではないか。(ビル・シューメイカー Bill Shoemaker/Point of Departure)
*Point of Departure(Issue 27 - February 2010 www.pointofdeparture.org)から筆者の許諾を得て訳出したものです。
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