# 694
大萩康司/フェリシタシオン!〜そして新たな日々へ〜
text by 相原 穣/Aihara Minoru
ビクター VICC-60738 \3,150(税込)
大萩康司 guitar
01 12月の太陽 (R.ゲーラ)
02 フェリシタシオン! (金子仁美)
03 ショティッシュ・ショーロ (ヴィラ=ロボス)
04 「アクアレル」〜ヴァルセアーナ〜ワルツ風に (S.アサド)
05 澄み切った空 (シネーシ)
06 すべては薄明の中で 第1楽章 (武満徹)
07 キューバの子守唄 (グレネ/ブローウェル編)
08 母に捧げるグアヒーラ (ロハス)
09 デ・ラ・ルンバ・ソン (マルティン)
10 タンゴ・アン・スカイ (ディアンス)
11 想いの届く日 (ガルデル/ビリャダンゴス編)
12 風の道 (アッセルボーン)
13 エストレジータ (ポンセ/ゴンサレス編)
14 始まりの日 (渡辺俊幸)
15 すべては薄明の中で 第4楽章 (武満徹)
16 11月のある日 (ブローウェル)
17 つづれ織りの記憶 (渡辺俊幸)
18 翼 (武満徹/福田進一編)
19 そのあくる日 (レイ・ゲーラとのデュオ・ヴァージョン) (R.ゲーラ)
大萩康司のデビュー10周年を記念する、いわばベスト盤。いわば、というのは、ベスト盤の体裁をとりながらも単に既出アルバムからの選曲ではなく、新録や再録が全19曲中で8曲も占めているからだ。CDショップで手に取り、すぐに聴いてみたくなったのも、ブローウェルの「11月のある日」が再録として収められていたからに他ならない。同名のデビュー・アルバムでこの曲の演奏を聴いたとき、淡い光の中に水彩の筆でひろがらせたような、慎ましやかで深い美しさが心を捉え、中南米のギター音楽の新世代の表現者が日本に登場したことを感じさせた。
今回のディスクのタイトル「フェリシタシヨン!」を眼にした時、同時に大萩康司の美質を表す言葉として「フェリシテ(至福、喜び)」という語を連想した。テクニックの非凡さや優れた洞察力を感じさせるアプローチにも頷かされるが、しなやかな右手から醸し出される響きのスペクトラムが常に音楽を奏でる喜びを放射していることが、自分がこの若きギタリストに惹かれる一番の理由である。
アルバムはキューバのギタリスト、レイ・ゲーラからの新曲「12月の太陽」に始まり、旧録の「そのあくる日」で輪を閉じる。その間で、ポンセやヴィラ=ロボス、セルジオ・アサドのギター曲、タンゴ歌手カルロス・ガルデルの名曲やキューバのポピュラーな子守歌、武満徹のギター曲や歌からの編曲、その他、日本の現代音楽シーンを刺激している金子仁美やTVや映画でおなじみの渡辺俊幸の新曲など幅広い出自の音楽を取り上げながらラテン・アメリカと日本を行き来するが、とにかくどの曲もメロディが歌われるというより、音楽全体がひとつの歌となって迫ってくる。先に触れた「11月のある日」の旧録と再録を聴き較べてみた。間合いはより深く、音の息づかいはいっそう繊細かつ自在で、10年前の演奏よりさらに感覚は広がっている。「フェリシタシオン(おめでとう)!」は演奏者本人の結婚記念に金子仁美より贈られた曲のタイトルとのことだが、この10年の歩みにもふさわしい。(相原 穣/Aihara Minoru)
追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley
:
#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣
:
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi
#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報
シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻
音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美
カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子
及川公生の聴きどころチェック
#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
#265 『中村照夫ライジング・サン・バンド/NY Groove』 (Ratspack)
#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)
オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美
ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)
:
#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義
:
#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
#874「マーク・ジュリアナ・ジャズ・カルテット」神野秀雄
#875「ノーマ・ウィンストン・トリオ」神野秀雄
Copyright (C) 2004-2015 JAZZTOKYO.
ALL RIGHTS RESERVED.