# 698
谷口英治/ザ・スイート・サウンド・オブ・ボサ・ノヴァ
text by 小西啓一
SSJレーベル XQAM-1514 ¥2,800
谷口英治(cl,arr)
小畑和彦(g)
コモブチキイチロウ(b)
岡部洋一(per)
イーデン・アトウッド (vo)
1. ノー・モア・ブルース
2. ジェット機のサンバ
3. ドント・エヴァ・ゴー・アウェイ
4. ザ・スウィーテスト・サウンズ
5. ウェイブ
6. ストラッティン・ウィズ・サム・バーベキュー
7. ジンジ
8. ユーヴ・チェンジド
9. ラメントス
10.喧嘩にさようなら
11.コルコヴァド
録音:2009年12月7日
ジャズ・アルバムを買い求める場合、ジャケットの素晴しさに惹かれて購入する、いわゆる“ジャケ買い”はぼくもよくするのだが、このやりかた意外に正解で、内容的にもはずれは少なくぴったりくるものが多い。そしてもう一つ、“楽器買い”という手もよく使う。すなわちアコーディオンやバンドネオンが入っているジャズ、これは大体買いなのである。そして最近、この2つと並んではまっているのがクラリネット。このスイング時代の花形楽器は、峻烈さを競うモダン・ジャズ期に入ると、その余りにも軽すぎる音色故に、ほとんど見向きされなくなってしまった。不運な存在でもある。しかしこのところ、すべてに軽さを求める時代風潮も追い風となり、またアナ・コーエンなどの若々しく鋭敏な資質も次々に登場したこともプラス材料で、曲味深いアルバムも結構あるのだ。
そうしたクラリネット・シーンで気を吐いている中堅の一人が、この谷口英治。彼はこの楽器の王道ともいえるスイング系から、一寸尖がったプレーまで、じつに守備範囲が広い好プレーヤーだが、ぼくが彼に興味を持ったのは、ユニークなラテン・ジャズ・ユニット=トリアングロと協演したアルバム(07年)以降のこと。日本にもこんな感性の人がいるんだと、嬉しくも頼もしくも感じたのだが、今度の新作はタイトルどおり“ボサノバ集”。もともとプロになり始めの頃は、ジャズとラテン(ボッサを含む)を半々ぐらいのペースでこなしていたという彼だけに、ボサノバ・アルバムは是非出したかったものだという。それだけに軽快なボッサ・プレーの中にも、その意気込みが滲み出ており、小畑、コモブチ、岡部といったJ−ボッサ最強布陣との相性も抜群。愉しさと心地良さが適度にない混ざった、ジャズ・ボッサの快作がここに誕生した。曲目はジョビン・ナンバーがメインだが、デキシーの名品<ストラッティン・ウイズ・ザ・バーベキュー>を、ニューオリーンズ特有のセカンド・ライン風バイヨン仕立てに作り直すなど、随所に才人谷口ならではの遊び心も窺える。また絶好調の歌姫イーデン・アトウッドが、3曲にゲスト参加しているのも嬉しいところ。今クラリネット、要注目ですぞ!(小西啓一)
追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley
:
#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣
:
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi
#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報
シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻
音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美
カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子
及川公生の聴きどころチェック
#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
#265 『中村照夫ライジング・サン・バンド/NY Groove』 (Ratspack)
#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)
オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美
ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)
:
#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義
:
#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
#874「マーク・ジュリアナ・ジャズ・カルテット」神野秀雄
#875「ノーマ・ウィンストン・トリオ」神野秀雄
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