# 699
バリー・ハリス/ライヴ・イン・レンヌ
text by 加瀬正之/Masayuki Kase
キング・インターナショナル:KKJ-102
(2010年7月中旬発売予定)
バリー・ハリス (p)
マティアス・アラマンヌ (b)
フィリップ・ソアラ (ds)
1. シー
2. バリー・ハリス(MC)
3. オール・ゴッズ・チラン・ガット・リズム
4. アイル・キープ・ユー・ラヴィング・ユー
5. ア・タイム・フォー・ラヴ
6. マイ・ハート・ストゥッド・スティル
7. バリー・ハリス(MC)
8. 6,5,7,3
9. バリー・ハリス(MC)
10. ルビー・マイ・ディア
11. バリー・ハリス(MC)
12. トゥ・デューク・ウィズ・ラヴ & プレリュード・トゥ・ア・キス
13. オフ・マイナー
14. ライト・ブルー
15. バリー・ハリス(MC)
16. ティー・フォー・トゥ
17. ナシメント
18. パーカーズ・ムード
19. バリー・ハリス(MC)
20. エム・バリー・ハリサブル・ユー
録音:2009年11月7日 レンヌ (フランス)
昨年2009年12月15日の誕生日で満80歳を迎えたバリー・ハリス。ビ・バップの真の伝道師であり、玄人好みの名ピアニストとしてジャズ・シーンで多大な貢献を果たしているが、80歳を迎えた現在もニューヨークでワークショップを行うなど、精力的に自身の演奏活動を行う傍ら、若手の育成にも人一倍力を注いでいる。そんなバリー・ハリスのニュー・アルバムがこのライヴ盤だ!
誕生日前の2009年11月7日にフランス・レンヌで行われたジャズ・フェスティバル『Jazz ・l'Ouest』に、フランス出身のマティアス・アラマンヌ (b)とフィリップ・ソアラ (ds)を従えたトリオで出演し、そのライヴ演奏を収めた作品。バリー・ハリスといえば、『アット・ザ・ジャズ・ワークショップ』(1960年)、『コンプリート・ライヴ・イン・トーキョー1976』(1976年)、『ライヴ・アット・メイベック・リサイタル・ホール Vol.12』(1990年)、『イン・スペイン』(1991年)、『ライヴ・アット・ダグ』(1995年)、『ライヴ・フロム・ニューヨーク! Vol.1』(2004年)等々、秀逸なライヴ盤を多く発表してきているが、本作も他の歴代の名ライヴ盤と肩を並べるほど素晴らしい名演が詰まっている。
オープニングのジョージ・シアリング作のバラード「シー」の味わい深さは、バリー・ハリスにしか出せないだろう。曲目に「バリー・ハリス」とあるように、あえてバリー・ハリス自身のMCをカットせずに収録している点もライヴの臨場感を一層際立たせる心憎い演出だ。全20曲収録でMCが6曲分なので、演奏は14曲収録ということになるが、「マイ・ハート・ストゥッド・スティル」「ティー・フォー・トゥ」「パーカーズ・ムード」などバリー・ハリスの十八番のナンバーから、「ルビー・マイ・ディア」「オフ・マイナー」「ライト・ブルー」とセロニアス・モンクのナンバーが3曲。そして、デューク・エリントンに捧げたバリー・ハリスのオリジナル「トゥ・デューク・ウィズ・ラヴ」から続く「プレリュード・トゥ・ア・キス」など、ビ・バップの魂を感じさせながら、作品全体に名フレーズ〜バリー・ハリス節の数々が散りばめられている。
音もクリアでバリー・ハリスの息づかいまで耳にすることができ、目の前で生のピアノを弾いてくれているような、言葉にし難い感動を覚える。バリー・ハリスのオリジナル・ナンバーは4曲収録されており、「6,5,7,3 」は心からジャズを楽しめるようないかにもバリー・ハリスらしいナンバーで、「ナシメント」はバリー・ハリスのライヴではお馴染みで、会場全体で一体となってジャズを楽しもうという姿勢とバリー・ハリスの温かい人柄を感じさせる素晴らしい名曲(この曲はミルトン・ナシメントについて書いた曲ではなく、1980年代にブラジルからニューヨークにやって来たある小さなドラマーのために書いた曲)。ラストを飾る「エム・バリー・ハリサブル・ユー」は、ガーシュウィン作の「エンブレイサブル・ユー」にインスパイアされたナンバーで、バリー・ハリスの味わい深いヴォーカルも聴ける。このようなオリジナル・ナンバーの演奏で体感できるアット・ホームな雰囲気も素晴らしく、ピアノ・トリオによるジャズの魅力を十分に楽しめる一品!
ジャケット写真のデザインもカッコよく、バリー・ハリスが指差す向こうにジャズの未来に向けた熱いメッセージが刻まれているようだ。ジャズには超絶技巧のピアニストたちも多く存在するが、テクニックだけではない個性の素晴らしさ、個性の味わい深さは、このバリー・ハリスのピアノを聴けば分かるだろう。
なお、バリー・ハリスと同じデトロイト出身で、先頃惜しまれながら亡くなったハンク・ジョーンズを称えて、『Celebration of Life & Memorial for the legendary Hank Jones』と題されたメモリアルが6月26日(土)ニューヨークの「Abyssinian Baptist Church」で行われるが、多くのジャズ・ミュージシャンと共にバリー・ハリスも参列予定で、ハンク・ジョーンズ縁(ゆかり)のナンバーを演奏するらしい。(加瀬正之/The Walker's)
追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley
:
#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣
:
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi
#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報
シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻
音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美
カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子
及川公生の聴きどころチェック
#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
#265 『中村照夫ライジング・サン・バンド/NY Groove』 (Ratspack)
#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)
オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美
ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)
:
#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義
:
#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
#874「マーク・ジュリアナ・ジャズ・カルテット」神野秀雄
#875「ノーマ・ウィンストン・トリオ」神野秀雄
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