#  701

安保徹/AMBO UNIT with BOB MOVER
text by 稲岡邦弥

What’s New/BounDEE WNCJ-2206 ¥2,800(税込)

安保徹 (ts)
ボブ・ムーヴァー (as,ts,vo)
吉田桂一 (p)
佐々木悌二 (b)
村田憲一郎 (ds)

1. GNID (Tadd Dameron)
2. Amborealized (Naoya Takeda)
3. Blues for T&A (Naoya Takeda)
4. Bean and the Boys (Coleman Hawkins)
5. Jubilation (Julian Mance)
6. East of the Sun (Brooks Bowman)
7. So Nice (Elmo Hope)

録音:佐藤 弘@Groove Studio、松戸、2009.10.15
プロデューサー:安保 徹+佐藤 弘

 “安保世代”のわれわれは、“安保”という単語に敏感に反応し、当然のように“アンポ”と読み下してしまうが、当アルバムの主人公「安保 徹」は、「アンボ・トオル」である。因に、Macの「ことえり」は、“アンボ”と入力しても「安保」とは変換してくれない。仕方なく“アンポ”と入力して「安保」と変換せざるを得ないのだ。
 安保 徹は1963年の生まれだからもちろん“安保世代”ではない。しかし、「安保」が身上とするのは、“安保”をさらに20年ほど遡るいわゆる“ビ・バップ”である。ちょうど、「安保」がこの世に生を受けた頃にスイング・ジャズに代わってニューヨークで演奏され出した即興演奏を主体とするジャズだ。ジャズのバックボーンといっても良い。しかし、「安保」は当時の音楽を演奏しているのではない。「安保」の言葉を借りれば「カヴァーするのはその曲を演奏していたミュージシャンの精神」、ビ・バップでいえば「革新の精神」である。このあたりの詳細とこだわりについては、同じWhat’s New レコードから2008年にリリースされたアルバム『安保 徹/ライヴ・アット・バッシュ・アゲイン!』 (WNCJ-2193/4) に付された瀧口譲司の優れたライナーノートを参照されたい。このアルバムは安保 徹の存在を広く世に知らしめた1999年リリースの『安保 徹カルテット/ライヴ・アット・バッシュ!』(WN-1007) を再発するにあたってテイクを増やし2枚組に仕立てたものである。“広く世に知らしめた”といえば、安保 徹の存在を人気ヴォーカリスト小林 桂のCDやコンサートを通じて知ったファンも多いかもしれない。たしかに、こだわり派の小林 桂のユニットでアンカー的存在感を示していたのも安保 徹であった。
 さて、このアルバムであるが、「安保」が新作を制作するにあたってニューヨークから盟友ボブ・ムーヴァー(1952年、ボストン生まれ)を招聘、ツアーを敢行した後、スタジオ入りで制作したものである。どこを切ってもビ・バップの香りがぷんぷん溢れている。2、3曲目は上記ライヴ盤でゲスト参加したヴィブラフォンの竹田直哉のペンになるものだが何の違和感もなく当時の曲と一緒に収まっている。とくに2曲目の<アンボリアライズド>は、竹田が「安保」のために書き下ろしたものだが“バッパー”安保を生かし切って抜かりがない。
ボブ・ムーヴァーもすっかりユニットの一員として化して好演しており、ジュニア・マンスの<ジュビレーション>などで薫陶を受けたフィル・ウッズasの影を落とす場面もあるが、スピリットでは「安保」の意を汲んで見事に拮抗している。そんなボブがふっと気を抜いて渋いノドを聴かせる<イースト・オブ・ザ・サン>もファンにはたまらないだろう。
 なお、このアルバムの発売元What’s New Recordsは、ベテラン・エンジニアの佐藤弘氏が主宰するインディ・レーベルで、松戸にスタジオを所有し、1997年に設立以来すでに150作ほどのアルバムを制作している。氏が好むメインストリーム・ジャズとヴォーカルが主体で、今月は安保 徹の他に女性ヴォーカルの上西千波『ア・ブーケ・オブ・ローゼズ』と、森郁『サムワン・アンフォゲッタブル』を発売するなど健闘を続けている。スタジオはジャズ録音用にチューニングされているので、氏の録音からはいつもガッツィなサウンドが飛び出してくるのが特徴である。(稲岡邦弥)

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NEW1.31 '16

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