#  703

ハロルド・ロペス=ヌッサ/エレンシア
text by 小西啓一

WORLD VILLAGE LT3280 1,800円(税込)

Harold Lopez-Nussa (p)
Felipe Cabrera (b)
Ruy Adrian Lopez Nussa,(ds)
Omara Portuondo (vo/“Es mas, te perdono”)
Mayquel Gonzalez (tp/Saudade” & “Pa’Philippe”)

1. Los Tres Golpes
2. La Jungla
3. Herencia
4. En el Isa
5. Timbeando
6. Saudade
7. Tears in Heaven
8. San Leopoldo
9. Es mas, te perdono
10. Pa' Philippe
11. Mama

日本のジャズ・ファンは異様なほどのピアノ好きで、売れるアルバムもピアノものがほとんどだとのこと。それもキース。ジャレットの流れを引く、欧州のちまちましたロマン〜知性派を捜し求めている連中が多いようですが、暑い夏の到来と共にここら辺で一つ、パッションとセンスが迸るキューバン・ジャズ、その若手の男気一杯の熱血プレーに浸ってみるのも、一興だと思うのですが…。
キューバの若手と言えば、今年の初めに”ブルーノート東京”で聴くものを狂喜乱舞させるような、圧巻のステージを繰り広げた、ロベルト・フォンセカ位しか日本のジャズ・ファンはなじみが無い様ですが、この国は彼に匹敵するような、卓抜な資質がごろごろいるピアニスト王国だとのこと(行ったことがないので確実なことが言えず、すみません!)。そのフォンセカと並ぶ突出した存在が、このハロルド・ロペス・ヌッサです。
この名前熱心なジャズ・ファンならば、何か思い出される方もいるかも知れませんが、あのゴンザロ・ルバルカバと並ぶキューバン・ジャズの至宝、エルナン・ロペス・ヌッサ(かつて1枚邦盤も出されましたが、ゴンサロに比べ余りにも過小評価)、その彼の甥にあたり、05年にはモントルー・ジャズ・フェスのピアノ・コンテストで優勝した実績を誇る逸材です。チューチョ・バルデスやミッシェル・カミロなどと言った、敬愛する先達にも匹敵する絢爛テクニックの持ち主で、その上俳優のアントニオ・バンデラスを髣髴させるようなイケメン。鬼に金棒と言った感じで、“BN東京”のステージに立ったら、女子ファンの人気沸騰すること間違いなしです。 アルバム・タイトルは“継承〜遺産”と言った意味合いで、キューバン・ジャズの伝統をしっかり踏まえながら、そこに現代の息吹もプラスさせた秀逸な内容のトリオ作です。エリック・クラプトンの<ティアーズ・イン・ヘブン>を取り上げている辺りにも、新世代の意気込みがはっきり感じ取れます。ベーシストはゴンサロのグループでもお馴染みの名手だし、異様なほどの切れを示すドラマーはエルナンの実弟。凄みと哀愁のない混ざった、暑い夏にぴったりの素晴しいトリオです。
それともう一つ特筆すべきは、キューバの美空ひばり(?)こと国民的ディーバのオマーラ・ポルトゥオンドが<エス・マス・テ・ペルドン>で、その年令に似ぬ素晴しく若々しい歌いっぷりを披露してくれていること。彼女はフォンセカもバック・アップしており、若手の育成にことのほか力を注いでいる様で、ここら辺りからもキューバン・ジャズの懐の深さが窺え、羨ましい次第ですね(小西啓一)

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FIVE by FIVE 注目の新譜


NEW1.31 '16

追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley

FIVE by FIVE
#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣


COLUMN
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi

#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報 シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻


音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美

カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子

及川公生の聴きどころチェック
#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
#265 『中村照夫ライジング・サン・バンド/NY Groove』 (Ratspack)
#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)

オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美

ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)

INTERVIEW
#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義

CONCERT/LIVE REPORT
#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
#874「マーク・ジュリアナ・ジャズ・カルテット」神野秀雄
#875「ノーマ・ウィンストン・トリオ」神野秀雄


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