#  707

キース・ジャレット+チャーリー・ヘイデン/ジャスミン

ECM2165/ユニバーサル UCCE-1125 ¥2,500(税込)

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キース・ジャレット(p)
チャーリー・ヘイデン(ds)

1.フォー・オール・ウィ・ノウ
2.ホェア・キャン・アイ・ゴー・ウィズアウト・ユー
3.ノー・ムーン・アット・オール
4.ワン・デイ・アイル・フライ・アウェイ
5.イントローアイム・ゴナ・ラーフ・ユー・ライト
6.ボディ・アンド・ソウル
7.グッドバイ
8.ドント・エヴァ・リーヴ・ミー

Recorded by Martin Pearson @ Cavelight Studio, Oxford, NJ, March 2007
Mastered by Manfred Eicher and Christoph Stickel @MSM Studios

 別枠で取り上げた辛島文雄と森山威男の新作の対極に位置するアルバムである。決して気分が高揚することなく、どこまでも深く沈潜していく。すでに還暦をとうに超えたジャレット(1945~)とヘイデン(1937~)の大人の静かな語らい。
旧友同士が何十年振りかの再会(彼らふたりの場合はアメリカン・カルテットの解散以来33年振り!)を喜び合い、成熟した今を認め合う。曲により、ジャレットの歌が聴こえるが極く控えめだ。同じく最終曲の<ドント・エヴァ・リーヴ・ミー>が収録された『メロディ・アット・ナイト、ウィズ・ユー』(ECM 1675/1998年)と対をなすアルバムと考えて良いだろう。慢性疲労症候群から再起をはかるジャレットが自宅のアトリエで愛する伴侶に聴かせるために自ら録音したアルバムである。同じアトリエで録音された本作についてジャレットは「深夜、奥さんや夫、恋人を呼び寄せてふたりで静かに耳を傾けて欲しい」とノートに記している。まさに、『メロディー』と同じ心境である。『メロディー』に対して筆者は随分辛い評点を付けた。あのジャレット特有の溢れ出るイマジナティヴなソロの欠如を惜しんだあまりのことだった。しかし、世評はきわめて高かった。意外なことにミュージシャンの評価が高かったことに驚いたことを覚えている。否応無く演奏する意欲を奪われたミュージシャンの心情を慮ったのだろうか。勢いに任せて畏れも知らず突っ走る時もあれば病み上がりで恐るおそるピアノに向かう時もある、天才ジャレットも人の子だったことを認めた安心感からか。 ヘイデンと伴侶と共に数日間を過したジャレットは、気の向くままアトリエでデュオを試みた。オーディエンスはそれぞれの伴侶である。プライヴェートなセッションを公にするかどうか相当やりとりがあった末の3年後のリリースである。無私の境地から生まれた無垢の音楽をリスナーとも共有したいというジャレットの意見が通ったようだ。彼らにとってはいわば日記を公開するようなものだ。勇断には拍手を送りたい。ジャスミンは夜間花をつけ香りが高いことで知られる。ジャスミンをタイトルに持ってくるところにジャレットのナルシスト振りが垣間みえる。(稲岡邦弥)

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追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley

FIVE by FIVE
#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
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#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣


COLUMN
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi

#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報 シスコ・ブラッドリー
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音の見える風景
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カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子

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オスロに学ぶ
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INTERVIEW
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CONCERT/LIVE REPORT
#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
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