# 709
Blu-Swing/Secret Of Attraction
Hei Global Entertainment HEIG-0010 \2,500 (税込)
01. INTRODUCTION
02. FEELIN’ BLUE
03. WHAT’S ON YOUR MIND
04. FABULOUS
05. ENVISAGE
06. PULSE
07. PROCESSED BLU
08. CHILDISH
09. INSPIRATION
10. MIDNIGHT OCEAN
Yusuke Nakamura (Composition and Keyboard)
Show Kojima (Guitar)
Shinji Hasuike (Bass)
Yu-ri Tanaka (Vocal)
Tomoaki Miyamoto (Drums)
Recorded by 速水直樹@湾岸音響、February 11, 2010
Produced by Blu-Swing
最近若いジャズバンドの活躍が著しい。Blu-Swingはクラブジャズバンドといわれているが、他アーティストのリミックスワークやヒップホップ的なアプローチなどを試みている。アンダーグラウンドなルーツは持ちつつも枠にとらわれず自分たちのサウンドに昇華しておりキャッチーで聴きやすい。クラブジャズというシーンはいったいどこまで進化するのだろうか。
Blu-Swing(ブルー・スウィング)は、2004年よりシーンに躍り出た、透明感のあるボーカル、斬新なピアノ、重くそして軽やかなウッドベース、哀愁漂うアコースティックギター、などのメンバーを含む日本の5人組のクラブジャズバンド。電子音によるハウス、テクノシーンにも通じる現代の感性を持ったクロスオーバーのアーティストである。そのシーンからは海外からの注目度も高く、ジャイルス・ピーターソンから注目されているなど、海外進出の可能性を秘めたグループである。先述したようにCOLDFEETを筆頭に国内外のアーティストのリミックスを手掛けるなど活動の幅も広い。
話をクラブジャズに戻そう。彼らの踊れる要素としては、アシッドジャズの影響も感じるし、ラテンやファンクの影響もあるだろう。リズムという観点からは個人的にはヒップホップの影響はあまり感じない。
クラブジャズの歴史を紐解くと1920年代では聴衆が踊るために演奏されていた商業的なジャズ。そして第2次世界大戦後、コードとアドリブの応酬による芸術性鑑賞が高いジャズが生まれ、聴く人を選ぶようになっていった。その踊れる大衆性と鑑賞性の融合が現代のクラブジャズの根幹にある。特に近年のクラブジャズといわれるものはコンガやリムショットなどのリズムを強調し、いかに踊れるかが重要視されてきた感がある。しかしBlu-Swingはそのありふれたフレームに収まらないのである。
Blu-Swingは聴く人によってはフュージョンそのものだと感じるかも知れない。楽曲について少しクラブジャズの観点も交えつつ解説してみたい。1曲目<INTRODUCTION>では、ルバートで始まるピアノのジャズバラードが次曲の期待を高めている。2曲目<FEELIN’BLUE>はライブの人気曲としてCD化の要望が高かったという「Earth, Wind & Fire」のクールなカバー。原曲の物悲しさはそのままに、昼間のイメージが夜に様変わりしている。3曲目<WHAT’S ON YOUR MIND>はギターの歪みがAllan Holdsworthの影響を感じさせ、4ビートのスウィング・ジャズでありながらも、ジャズ・ロック風なアプローチが斬新である。4曲目<FABULOUS>のボーカルメロディの浮遊感はドイツのジャズ・フュージョン界に金字塔を打ち立てたOLIVIER PETERS QUARTETを彷彿とさせるナンバー。16フィールの8ビートからスウィング調になる展開はフュージョンならではである。5曲目<ENVISAGE>はShow Kojimaの哀愁ただようギターがたっぷりと堪能できるスロウなナンバー。6曲目はLondon Elektricityのように人力でドラムを打込みのように聴かせている。細やかなパッセージにラテンフィーリングを感じ踊れるナンバー。7曲目<PROCESSED BLU>はかなりロック色が強いファンキーな楽曲。8曲目<CHILDISH>はこちらも4曲目と同じようなビートが変化するナンバーだが、Ramsey Lewisのような繰り返しが気持よいテーマが耳に残る。9曲目<INSPIRATION>はライブ会場だろうか観客のざわめきを挿んでいる。10曲目<MIDNIGHT OCEAN>では日本らしいフュージョンを聴くことができる。
全体を通して統一されたトーンとマナー。クラブジャズ=踊りという固定観念にとらわれない、それぞれメンバーの個性を生かしたプレイと楽曲アレンジにバンドとしての幅広さや充実度が窺(うかが)える。Blu-Swingが今後クラブジャズシーンの中心を担うかもしれない。昔のフュージョンファンと今の若者が同じライブ会場で集い、そこで展開される即興演奏を世代を越えて楽しんでいる、そんな空間に立ち会いたい。(栃久保敬)
www.myspace.com/bluswing
■栃久保敬(とちくぼ・たかし)
1978年東京生まれ。大学で音響工学を学び、録音エンジニア、音楽作家のマネージメント、原盤制作ディレクターなどを経験。コンピレーションCD『Kids Bossa』、『Kid's Santa』や、G2us『ふるさと〜mother place』などを企画。アート・ディレクションなども手がける。現在ブルームアートミュージック代表。
追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley
:
#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣
:
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi
#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報
シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻
音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美
カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子
及川公生の聴きどころチェック
#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
#265 『中村照夫ライジング・サン・バンド/NY Groove』 (Ratspack)
#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)
オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美
ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)
:
#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義
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#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
#874「マーク・ジュリアナ・ジャズ・カルテット」神野秀雄
#875「ノーマ・ウィンストン・トリオ」神野秀雄
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