# 719
Mike Mainieri featuring Charlie Mariano, Dietar Ilg/Crescent
text by 今村健一 / Kenichi IMAMURA
NYC Records / NYC-6041
Disc 1:
1. Mr. Syms (7:17)
2. Like Someone In Love (6:10)
3. I Love You (5:03)
4. Wise One (8:44)
5. Nancy (6:09)
6. Ole (5:46)
7. Naima (5:16)
Disc 2:
1. Crescent (9:09)
2. Bye Bye Blackbird (5:45)
3. Miles' Mode (4:56)
4. What's New (8:51)
5. Giant Steps (4:42)
6. Body And Soul (6:26)
7. America (3:25)
Mike Mainieri(vib)
Charlie Mariano(as)
Dieter Ilg(b)
Recorded at Topaz Studios, Cologne, Germany. 2005
Producer:Mike Mainieri
Engineer:Reinhard Kobialka
Mastering, Mixing:Jay Messina
本作はジョン・コルトレーンとチャーリー・マリアーノという2人の巨人に捧げられている。事の経緯はこうだ。マイク・マイニエリはマリアーノと数十年に渡り各地のフェスでニアミスしてきたのだが、ようやく04年にデュッセルドルフ・ジャズ・ラリーのステージで初共演、翌05年に晩年のマリアーノが拠点としていたケルンにてコルトレーンの愛奏曲を吹き込むというスタジオ・セッションに繋がった。いよいよ死を間近にした病床のマリアーノたっての希望により、未発表だったそのテープが、稲岡編集長によるJazzTokyoでの追悼文から1年強というこのタイミングで2枚組アルバムとしてようやく日の目を見たのである。
既にマリアーノの体は相当弱っておりブローも安定せず、彼のレギュラー・ベーシストだったディーター・イルグが呼ばれたのも、体調管理役的な意味合いもあった。何度か録音も中断され、仕切り直しも検討されたという。
しかし、そんな悪状況にあったことを微塵も感じさせない程に、ここでのマリアーノはメロディを慈しみつつ無駄のない鋭利なソロを見事に吹ききっている。マイニエリのヴァイブも、時に雲が漂うような自由な音空間を提供したり、時にマリアーノの演奏を受けダブル・タイムでのソロを展開するなど、マリアーノから創造的なフレーズを引き出す為に出来ることの“すべて”を行っており胸を打つ。いわゆる“ジャズ”という枠組みを超えエレクトリックから民族音楽まであらゆる可能性を試みてきたモダニスト同士だからこそ、互いの行間を補いながらもなお聴き手のイマジネーションを刺激する余白のあるこの“less is more”な素晴らしいサウンドが実現出来たのだと思う。
コルトレーン『エクスプレッション』、スタン・ゲッツ『ピープル・タイム』、マイケル・ブレッカー『ピルグリム』といったように過去に“死期を悟ったサックス奏者が最後のクリエーティビティを発露する瞬間”を捉えた名盤が幾つか残されているが、この『Crescent』もまた必ずやジャズ史に刻まれる壮絶な美を放つ一作である。(今村健一)
追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley
:
#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣
:
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi
#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報
シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻
音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美
カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子
及川公生の聴きどころチェック
#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
#265 『中村照夫ライジング・サン・バンド/NY Groove』 (Ratspack)
#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)
オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美
ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)
:
#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義
:
#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
#874「マーク・ジュリアナ・ジャズ・カルテット」神野秀雄
#875「ノーマ・ウィンストン・トリオ」神野秀雄
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