#  726

スガダイロー/渋さ知らズを弾く
text by 稲岡邦弥 / Kenny INAOKA

CoolFool/velvetsun CLFL-0004 2,500円(税込)
2010年10月6日発売予定
スガダイロー(p)
東保光 (b)
服部正嗣 (ds)
竹内直 (ts on M4,9)
後藤篤 (tb on M4,9)
special guest:
不破大輔 (b on #3,4,7,9)

1.アングラーズの決闘
2.犬姫のテーマ
3.キリシタンバテレン
4.ライオン
5.PA!
6.サリー
7.股旅
8.ひこーき
9.本田工務店のテーマ 
10.火男

作曲:不破大輔(M3/スガダイロー、M7/佐々木彩子を除く)
録音:2010年6月 神奈川県平塚



本誌でスガダイローを取り上げるのはこれで3度目。まず、横井一江女史が今回のトリオの2作目『黒船・ビギニング 〜須賀大郎短編集(下)〜』を2009年度の国内盤ベストに推した。筆者はダイローと鈴木勳bのデュオの印象記を書いた。その後、筆者はこのデュオを2度、白楽の「Bitches Brew」に追いかけた。ダイローについてはCDも何作か聴いているが、鈴木勲とのライヴが格段に面白かった。彼らはフリーを装いながらつねにコード感は残しているという、いわゆるアメリカでいう“フリー・バップ”で、ビギナーにも楽しめるスイタル。先生が生徒に稽古を付けるのだが、いつしか先生が生徒にやりこめられタジタジとなる。しかし、そこは先生もダテに年はとっていない。踵(きびす)を返すや生徒を返り討ちにする。この白熱の攻防がとても面白かったのだ。先生は試合が終わるとさっと姿をくらますのだが、生徒はいつまでもビールを飲みながら余韻を楽しむ、そんな果たし合いが3度あった。余談だが、公家顔をしたダイロー(先祖はさる公家ということだ)が苦悶に顔を歪める表情がたまらない、という女性ファンもいるとか。 このアルバムは「渋さ知らズ」のピアニストでもあるダイローが本来の意味の師匠・不破大輔の作品を中心に演奏したものだが、まず、「渋さ」の演目をピアノトリオで演奏する(何曲かは管や師匠のベースを差して編成を大きくしている)、という発想がいかにもダイロー的で意表を衝く。しかし、ほとんどが芝居のために書かれた音楽でもあり、「渋さ」でのパフォーマンスをばらして再構築した、といってもやはりどうしても「渋さ」のステージを彷彿させてしまうのは致し方ないだろう。とくに二管が加わったM.4、9は彼らのステージが目に浮かんでしまう。そんな中にあってうまい場所にはめ込んだM.3(ダイロー作)とM.7.(佐々木彩子作)がうまく雰囲気を変えてくれる。M.7からピアノ・ソロで弾かれるM.8を経てM.10に至る流れはほとんどメドレー的に編集されていることもありダイローの世界にはまったまま芝居のように大団円を迎える。
洗足学園を経て4年間をバークリー音大で過ごしたダイローは何を学び、何を学ばなかったのだろうか。学んだことがあったとしてもそれを露骨に披露するような男ではない。むしろ学んだことを一旦すべて捨て去って来たのかも知れない。
このアルバムの随所で確認できるようにダイローの指遣いはすでに全盛期の山下洋輔に迫っている。諧謔味とエンターテインメント性もすでに獲得したダイローはいつ山下とクロスフェイドするのだろうか。(稲岡邦弥)

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NEW1.31 '16

追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley

FIVE by FIVE
#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
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#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
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#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣


COLUMN
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi

#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報 シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻


音の見える風景
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カンサス・シティの人と音楽
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オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美

ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
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