#  731

Creative Music Studio/Archive Selections volume 1
text by 稲岡邦弥 / Kenny INAOKA

Creative Music Studio CMS-AR01

1. May Day
2. Child of the Night
3. I Am a Leaf for Today
David Izenson (b)
Ingrid Sertso (vo/2,3) Karl Berger (vib/2, p/3)
Recorded 1975 at Grog Kill Studio, Mt.Tremper, NY

4. CMS Scene 1
5. CMS Scene 2
6. CMS Scene 3
7. Two by Two
Oliver Lake
with the CMS Orchestra-soloists:Oliver Lake (as,fl) Michael Gregory (g)
James Harvey (tb)
Recorded 1976 (1-3) and 1979 (4) live at the Creative Music Studio

8. Kumbu Scora
9. Demba Tenkeren
10.Disco Gates
The Mandingo Griot Society
Foddy Suso (kora) Adam Rudolph (perc) Hamid Drake (ds) John Marsh(e-b)
Recorded 1980 live at the Creative Music Studio

Produced by Karl Berger for CMS CMS Recordings, Woodstock, NY



このデータを見ただけで胸が躍るファンも少なくないのではないだろうか。
70年代を中心に世界各国からクリエイティヴなミュージシャンが集い来て創造の腕を競い合ったウッドストックのクリエイティヴ・ミュージック・スタジオ(CMS)。かつて極く一部の記録が単発でリリースされたことがあったが、この度、コロンビア大学のジャズ研究センターの協力を得て1973年から1984年にわたって記録された膨大なアーカイヴの中から主宰者のカール・ベルガーが中心となって厳選されたパフォーマンスが体系的に公開されることになった。本作はその第1集で、関係者及び予約購買者にのみ頒布されたが、近々、Planet Arts レーベルを通じて一般発売されることになっている。
CMSは、1971年にオーネット・コールマンとイングリート・セルツォ、カール・ベルガー夫妻によって設立されたクリエイティヴ・ミュージック・ファウンデーション(CMF)の主要機関である。筆者も本誌悠雅彦主幹と1975年にCMSを訪れたことがあったが、大きなキャンパスを囲むように平屋の施設が建てられ、その中でさまざまなワークショップやコンサート、クリニックが連日行われていた。参加者はアメリカを始め、アジア、ヨーロッパ、アフリカ、南米などから参集しており、音楽は即興と各国の伝統音楽が混交されたものとなって、目指すは“WorldJazz”であった。
第1集の本作はシリーズを象徴する内容となっている。最初の3曲はCMSと近所付き合いをしていたマイク・マントラーtpとカーラ・ブレイpのスタジオで録音されたもので、スターターはベースのデイヴィッド・アイゼンソン(1932~1979。奇しくも寺山修司と同じ47歳で早出した) のソロ。75年は、アイゼンソンが「音楽はどのようにして世界を救えるか」というジャズ・オペラを書いた時期にあたるが、意思の固まりのような強靭な音を発しながらメッセージを語っている。ベルガー独特の乾いたヴァイブとピアノ、セルツォのヴォイスが加わる2曲は共に極めて内省的で彼らの音楽に対する姿勢が反映された演奏といえる。ベルガーによれば、このトリオは当時NYでもかなりの頻度で演奏を披露していたようだ。アイゼンソンの生徒で親友でもあったジョン・リンドバーグbとベルガーの語るアイゼンソンの人間像が極めて興味深い。なお、リンドバーグにはペリー未亡人からアイゼンソンの大量の録音テープが託されており、折りをみて公開していく予定という...こんな風に綴っていくと紙数が幾らあっても足りない。このアルバムについては稿を改めて紹介させていただくとする。
次のセクションはオリヴァー・レイク(as,fl) の作品を演奏するCMSオーケストラ。ソロイストはレイクを含めて3人。長尺の演奏からの抜粋だがさまざまに色合いの変化するオーケストレーションを背景にソロが展開される。オーケストレーションは打楽器を中心とした点描風で静かなウッドストックの佇まいを思わせる。そのなかでセントルイスのBAG(Black Artists Group, 1968~)での経験を負ったレイクのソロが極めて刺激的だ。レイクのWSQ (World Saxophone Quartet, 1977~) の結成前後の動きに興味が向く。
最後の3曲はフォディ・ムサ・スソを中心とする「マンディンゴ・グリオ・ソサエティ」の“ワールド・ジャズ”。スソは西アフリカ・ガンビアの生まれで、マンディンゴ族の口承詩人の家系を継ぐコラの第一人者。ガーナからマリを経てシカゴに入り、3人のリズム隊を得てこのグループを結成、NY に進出しCMSに草鞋を脱いだ。ベルガーは、アフリカの伝承音楽とジャズのリズムのコラボレーションを実現したこのグループこそ彼の目指していたものであると賛辞を惜しまない。事実彼らの創り出すグルーブは素晴らしく、どこまでも大地と人間の香りを紛々とまき散らす。スソの名人芸に息つく暇を盗まれるに違いない。
2集以降の内容に大きな期待を抱かせる終曲である。(稲岡邦弥)

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FIVE by FIVE 注目の新譜


NEW1.31 '16

追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley

FIVE by FIVE
#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣


COLUMN
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi

#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報 シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻


音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美

カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子

及川公生の聴きどころチェック
#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
#265 『中村照夫ライジング・サン・バンド/NY Groove』 (Ratspack)
#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)

オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美

ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)

INTERVIEW
#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義

CONCERT/LIVE REPORT
#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
#874「マーク・ジュリアナ・ジャズ・カルテット」神野秀雄
#875「ノーマ・ウィンストン・トリオ」神野秀雄


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